家畜ふん堆肥中の常法では抽出されないアンモニア態窒素の存在


[要約]
家畜ふん堆肥には、従来の2M塩化カリウム液では抽出されないアンモニア態窒素が存在し、それはリン酸マグネシウムアンモニウムの可能性が高い。0.5M塩酸抽出によりリン酸マグネシウムアンモニウムを含めたアンモニア態窒素が抽出でき、堆肥をほ場施用した時のアンモニア態窒素量が把握できる。

[キーワード]家畜ふん堆肥、アンモニア態窒素、リン酸マグネシウムアンモニウム

[担当]岐阜農技研・環境部
[連絡先]電話 058-239-3135
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  家畜ふん堆肥の無機態窒素の定量は速効的窒素を把握する上で重要であるが、従来の2M塩化カリウム抽出による測定ではアンモニア態窒素が全量抽出されているか疑問が持たれる。そこでアンモニア態窒素の存在形態、抽出法について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 堆肥から抽出溶媒を変えアンモニア態窒素を抽出すると、常法での抽出量は少なく、pHが低い抽出液ほど、アンモニア態窒素抽出量が増加する傾向となり、常法では抽出されないアンモニア態窒素の存在が認められる(図1)。
2. 堆肥と水の混合液に塩酸を添加した場合、3畜種の堆肥いずれもpHの低下とともにアンモニア態窒素溶出量が増加し、pH5でほぼ一定量となる。一方、常法では当初の水との混合に近い値を示し、pHが高いために抽出されていないと推察される(図2)。
3. EDTA・2Na液、EDTA・3Na液を堆肥と水の混合液に添加した場合も、アンモニア態窒素の抽出量が増加し、EDTA添加では塩酸より高いpHで抽出される(図3)。このことから、pHの低下や2価の金属イオンの抽出にともないアンモニアが抽出されると考えられ、アルカリ下では溶解しない2価の金属イオンとの化合物としてリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)が推察される。
4. MAPに堆肥と同様に各種溶媒を添加した場合、pHとアンモニア態窒素抽出量の関係は堆肥の場合と同様の傾向を示すことから、MAPの可能性が高い(図3)。
5. このアンモニア態窒素は土と塩化カリウム溶液(堆肥のほ場施用を想定)の混合によっても抽出される(図1)。この抽出と、0.5M塩酸・2M塩化カリウム(常法)の1:10抽出について比較すると、常法抽出では抽出量が少なく、0.5M塩酸抽出では同等となり相関も高い(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 鶏ふん堆肥には、常法では抽出されない別のアンモニア態窒素が存在し、それらを含めて抽出するには1M塩酸による抽出が適する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:有機物利用による効率的施肥技術の確立
予算区分:土壌保全
研究期間:1998〜2005年度
研究担当者:棚橋寿彦、矢野秀治

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