セルロースの土壌添加によるトウガラシマイルドモットルウイルスの不活化促進


[要約]
トウガラシマイルドモットルウイルスに感染したピーマン根を含む土壌に、セルロース粉末を混合して8週間程度培養すると、土壌微生物の関与によって土壌中のトウガラシマイルドモットルウイルスの不活化が促進される。

[キーワード]ピーマン、セルロース、トウガラシマイルドモットルウイルス、土壌微生物

[担当]中央農研・土壌肥料部・土壌生物研究室
[連絡先]電話 029-838-8828
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  ピーマン栽培では、臭化メチルの全廃によりトウガラシマイルドモットルウイルス(Pepper mild mottle virus ; PMMoV)による被害の増大が懸念されている。PMMoVに罹病した植物残さが土壌中に残存して感染源となることから、土壌中のPMMoVの不活化を促進する技術の開発を目指している。ここでは、感染根混入土壌のPMMoV不活化を促進する目的で種々の有機物資材の添加効果を検討し、有効な資材を選抜する。

[成果の内容・特徴]
1. PMMoV感染根を混合した土壌を25℃下に静置してPMMoV活性の推移を定期的にみると、初期段階でいったん増加するが、2週目以降急激に減少する(図1)。
2. ピーマンの新鮮根をメッシュに挟み土壌に埋め込んで静置した場合の根の分解は、最初の2週間で急激に進み、その後緩やかになる(図1)。
3. PMMoVの不活化は、根の分解が急速に進んだ後に起こると考えられる。
4. 種々の有機物資材についての予備検討では、セルロースが最も有望であった(表1)。
5. 感染根を混合した土壌にセルロース粉末を2%添加して培養すると、8週間後のPMMoVの活性は低下する。この現象は2種の土壌試料(淡色黒ボク土、普通黒ボク土)で認められる(表2)。
6. 土壌へのセルロース粉末2%の添加は、8週間後でも根の分解を促進しない(データ省略)。
7. セルロースの土壌添加によるPMMoV不活化促進効果は、抗生物質(シクロヘキシミドまたはクロラムフェニコール)の添加により低下する(表3)。このことは、セルロース添加の効果には土壌微生物が関係していること示している。

[成果の活用面・留意点]
1. 供試した普通黒ボク土ではセルロースの効果が安定して発現したが、淡色黒ボク土では採取時期によっては効果が発現しなかった。
2. セルロースの効果に関与する微生物については検討中。
3. 栽培試験での感染抑制については検討中。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:トウガラシマイルドモットルウイルス防除のための土壌のクリーン化技術の開発
課題ID:03-06-05-*-03-03
予算区分:IPM
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:岡紀邦、大木健広、本田要八郎、長岡一成、西尾隆

目次へ戻る