作物栽培における農地に対する窒素負荷量試算システム


[要約]
データベース化した収穫物及び収穫副産物の窒素吸収量、平均収量、施肥基準などから、作物ごとにほ場に残る窒素量、すなわち農地に対する窒素負荷量を算出できる。

[キーワード]肥料、たい肥、窒素負荷量、作付体系、窒素収支

[担当]千葉農総研・生産環境部・土壌環境研究室
[連絡先]電話 043-291-9990
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]行政・参考

[背景・ねらい]
  硝酸及び亜硝酸態窒素が環境基準値(10mg/L)を超過する井戸水や河川水がみられ、その原因として生活排水、畜産排せつ物とともに施肥窒素が指摘されている。このため、営農現場では地下水への窒素負荷を低く抑える施肥・作付計画を立てる必要に迫られ、化学肥料やたい肥などから農地に投入される窒素量と、収穫物などで農地から持出される窒素量を求めて、それらの収支合計からほ場に残存する窒素量を明らかにすることが望まれている。そこで、収穫物と収穫副産物の窒素吸収量、平均収量、施肥基準などの現在利用可能な情報をデータベース化し、ほ場に残存する窒素量(窒素負荷量)を試算するシステムを開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 収穫物及び収穫副産物の窒素吸収量、平均収量、施肥基準をデータベース化したことから、野菜43品目71作型、畑作物7品目、果樹10品目について、1年間でほ場に残る窒素量、すなわち窒素負荷量が試算できる。
2. 窒素は施肥、たい肥、降雨及びほ場還元される収穫副産物で農地に投入され、収穫物、搬出される収穫副産物及び脱窒で持出されるというフローに従って、窒素収支を算出する表計算ソフトを利用したシステムである。作物ごとに10a当たりの収支が求められるので、作付体系にあわせた負荷量の試算が可能である(図1)。
3. 主要作物及び作付体系について、2作目ではたい肥を施用しない条件で、10a当たりのほ場に対する窒素負荷量を試算した(表1)。負荷量は、ラッカセイ、カンショではそれぞれ−2.6、0.8kgで小さく、サトイモとゴボウでは20kg程度である。キャベツ−ダイコン、スイカ−ニンジンなどの体系では24〜37kgで、スイートコーン−ソラマメでは47kgであり、ハウス栽培のトマト−キュウリの体系では78kgで多い。

[成果の活用面・留意点]
1. 窒素収支のフローは、三島の手法(農業環境シンポジウム、1999)に準じた。
2. 農地に対する窒素負荷量が地下水への負荷量と等しくはならない。
3. 施肥量、たい肥量、収量を変更することで、地域の作付体系と施肥管理、収穫状況に合わせて試算が行える。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:市町村別農業生産系に関わる物質収支の解明
予算区分:県単
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:八槇 敦、斉藤研二、安西徹郎
発表論文等:八槇ら(2003)千葉農総研報2:69-77.

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