地上部残渣除去はコンニャク乾腐病の土壌伝染抑制に有効である


[要約]
コンニャク乾腐病菌(Fusarium oxysporum)は発病株における葉柄内部の上位まで存在し、その地上部残渣が土壌中に残ると土壌伝染の原因となる。地上部残渣を圃場から丁寧に除去する管理を継続することで乾腐病の土壌伝染による発病は抑制できる。

[キーワード]コンニャク、乾腐病、土壌伝染、地上部残渣、除去、耕種的防除法

[担当]群馬農技セ・生産環境部・病害虫グループ
[連絡先]電話 027-269-9123
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  コンニャクの栽培は主に種球を自家採取して行われている。有効な種球消毒剤の処理により、乾腐病の種球伝染経路は効果的に遮断されてきた。土壌伝染経路については、土壌消毒が長年実施されてきたことにより、これまで重要視されなかった。しかし、近年、マルチ同時土壌消毒機の普及により省力化が進む反面、未消毒土壌の混入による再汚染の危険性が増し、各種土壌病害虫の被害が発生する事例が認められるようになった。また、耕作地への混住化または環境保全型農業の実践等により土壌消毒がされない場合が増加している。そこで、コンニャク乾腐病の土壌伝染経路を明らかにするとともに、薬剤によらない有効な耕種的防除法を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. コンニャク乾腐病は、発病により葉柄基部に腐敗が生じ、さらに進展すると地上部の葉柄や小葉が黄化する。これら発病株の葉柄内部において、乾腐病菌(F. oxysporum)は葉柄基部から15cmの上位まで存在が確認される(表1)。
2. コンニャク乾腐病菌(F. oxysporum)を土壌接種して発病させた株の地上部残渣を消毒土壌に混和すると発病は有意に増加し、その発病は、混和量が多いほど増加する(表2)。発病の多い条件では、残渣を継続して放置管理することで発病は有意に増加する(図1)。したがって、発病株の地上部残渣が土壌中に残ると土壌伝染の原因となる。
3. 地上部残渣混和による汚染土壌において、収穫前における地上部残渣除去を徹底して継続(採集できる残渣全量除去)することで、発病を有意に抑制できる(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 葉枯病の伝染源としての地上部残渣は、地表面に存在することで生じるため、耕耘作業による残渣鋤込みも有効とされたが、乾腐病では残渣鋤込みによる発病抑制は期待できない。
2. 乾腐病が既に多発している圃場では、地上部残渣除去を徹底して継続しても、急激な発病軽減は期待できない。そのため、本法は、発生の少ない圃場において被害を低レベルに維持するための管理方法とする。
3. 乾腐病対策として、種球選別および種球消毒を地上部残渣除去と併用する。土壌消毒を実施しない圃場では、地上部残渣を含め被害残渣の除去を実施する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:農薬耐性菌および薬剤抵抗性害虫対策研究
予算区分:国補
研究期間:1999〜2003年度
研究担当者:柴田 聡

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