イチゴセンチュウによるワサビの被害とその対策


[要約]
県内のワサビ産地で問題になっている俗に「頭とび症」と呼ばれる障害の原因がイチゴセンチュウであることが判明した。この線虫はワサビの主根と分根に寄生しており、分根を苗として使用することで発症する。また、ワサビ田を流れる水を介しても伝播する。 ワサビを水と隔離するパイプ栽培を行なうと伝播を抑止できる。

[キーワード]野菜、ワサビ、イチゴセンチュウ、障害、頭とび症、パイプ栽培

[担当]静岡農試・わさび分場
[連絡先]電話 0558-85-0047
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(虫害)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  これまで、県内のワサビ産地で問題になっている俗に「頭とび症」と呼ばれる症状(図1)の原因は線虫と見られていたが、その詳細は不明であった。そこで、原因と考えられる線虫の種の同定と被害の再現を行なうとともに、伝播経路を解明する。

[成果の内容・特徴]
1. 頭とび症多発ほ場から採取したワサビの主根と分根には、多くの場合イチゴセンチュウが寄生している(表1)。
2. 接種・再現・再分離試験により頭とび症の原因がイチゴセンチュウであることが判明した(表2)。
3. ワサビ田に流れる水を介してイチゴセンチュウは伝播する。
 閉鎖型の水循環式栽培装置に健全ワサビ苗を定植し、循環する水に線虫を約100頭/1lとなるように接種し、約3ヵ月後に寄生センチュウ数を計測した。水に接種した区では全ての株で線虫の寄生が確認できた(表3)。このため、ワサビ田に流れる水を介してイチゴセンチュウが伝播すると考えられる。
4. ワサビを水と隔離するパイプ栽培(図2)を行なうと、頭とび症の発症を減らすことが出来る(表4)。パイプ栽培は、直径10cm程度の塩ビ管を長さ10cm程度に輪切りにし、これをワサビ田の作土に縦に2〜3cm埋め込み、その輪の中にワサビを植え付ける。畳石式ワサビ田では、水が下方に染み込むため、パイプの内部は水が無くなり比較的乾いた状態で、ワサビを水から隔離する。

[成果の活用面・留意点]
1. 頭とび症発生ほ場で採取した分根を苗として使用しない。健全な組織培養苗や実生苗を使用する。
2. パイプ栽培では根茎表面の色が悪くなるため、収穫の6ヵ月前にパイプを除去する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:ワサビ頭とび症の発生実態と原因究明
予算区分:県単
研究期間:2000〜2002年度
研究担当者:鳥居雄一郎、石井ちか子、飯山俊男

目次へ戻る