フェニックス類に発生する葉枯れ性病害の病原菌および炭疽病の防除薬剤


[要約]
フェニックス類(シンノウヤシ)に発生する4種の葉枯れ性病害の病原菌を同定し、新病害として病名を付し、農薬登録のため、炭疽病に有効な防除薬剤を明らかにした。

[キーワード]フェニックス類、葉枯れ性病害、新病害、薬剤防除、観葉植物

[担当]東京農試・環境部・病害虫管理研究室および八丈島園芸技術センター
[連絡先]電話 042-524-3191
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  東京都の八丈島は観葉植物の栽培が盛んで、中でもフェニックスの一種、シンノウヤシ(Phoenix humilis)の切り葉栽培は島内農業生産額の半分、国内シェアは95%を超える。当地では生産阻害要因となる葉枯れ性の病害を'タンソ病'と総称しているが、病原学的な検証はされていない。そこで、病原菌の分離、接種試験および属種名同定を行い、樹木類での農薬登録を図るため5種薬剤の防除効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. フェニックス類の生産阻害要因となっている4種の未記載の病害が認められる。病徴を下記に、病原菌の特性を表1に記す。
(1) 炭疽病:小葉に発生する。暗褐色、不整形病斑を生じ、葉先、葉縁から灰褐色に葉が枯れ、病斑上に分生子層が散生する。
(2) 褐紋病:小葉、葉軸、葉柄基部に発生する。周囲明瞭な紡錘形〜楕円形の褐斑を生じ、葉が枯れ、病斑上に分生子殻が散生する。
(3) 黒葉枯病:葉身に発生する。暗褐色〜黒色、不整斑が急速に拡大、葉枯れを起こし、分生子殻子座が散生〜群生する。
(4) ペスタロチア病:葉身に発生する。褐色〜灰褐色、不整形の小病斑を多数生じ、葉枯れを起こし、病斑上に分生子層が散生する。
炭疽病菌および黒葉枯病菌は多犯性で多くの植物に病原性を示す。褐紋病菌およびペスタロチア病菌はヤシ科植物のみに病原性が認められる。
2. フェニックス類炭疽病に対する薬剤防除試験の概要
網室および露地での試験において、供試薬剤中で最も効果が高かったのはベノミル水和剤で、両試験で散布30日後まで防除価93以上を示し、他剤も散布10日後で防除価79〜92、30日後でも防除価70以上で、いずれの薬剤とも薬害も認められず、実用性はあると判断される(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 発生病害の正確な診断により、適切な防除指導が可能となる。
2. 現在、樹木類で適用のある薬剤はチオファネートメチル水和剤1500〜2000倍である。同剤以上に効果のある薬剤および同等の効果を有し、系統の異なる薬剤が明らかになったので、これらの薬剤が樹木類へ適用拡大されると、フェニックス類の生産安定化に寄与できる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:新病害虫の診断・同定および未解明症状の原因と対策
予算区分:都単・国庫(高度化事業「緑化樹木等の樹木病害に対する防除薬剤の公立的適用化に関する研究」採択番号1549番/1549番/林業分野)
研究期間:1999〜2003年度
研究担当者:竹内 純、星 秀男、堀江博道
発表論文等:1)竹内 純・堀江博道(1999)日植病報65:657〜658(講要).
      2)竹内 純・堀江博道(1999)日植病報66:273(講要).

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