弱病原力フザリウム菌によるシンビジウム病害の生物防除


[要約]
シンビジウム病害は、弱病原力フザリウム菌を葉に前接種することにより発病抑制される。その効果は接種後3日目頃から生育期間を通して持続し、シンビジウムの生育および開花に影響しない。発病抑制機作は全身獲得抵抗性である。

[キーワード]弱病原力フザリウム菌、シンビジウム病害、生物防除

[担当]山梨総農試・栽培部・作物病害虫科
[連絡先]電話 0551-28-2496
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  シンビジウムの病害は、葉に発生する黄斑病、褐色腐敗病等および根に発生する腐敗病、乾腐病などがあり、安定生産する上で障害となっている。さらに、有効な薬剤はなく、耕種的な防除対策だけでは不十分である。健全なシンビジウム葉から分離された弱病原力フザリウム菌(HPF-1株)は、黄斑病に対して高い防除効果を示す。そこで、本菌を利用したシンビジウム病害の生物防除を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. HPF-1株をシンビジウム葉に感染させることにより、葉に斑点を生じる黄斑病、葉が腐敗する褐色腐敗病および根やバルブが腐敗する腐敗病や乾腐病を防除できる(表1)。
2. HPF-1株の防除効果は、黄斑病では接種後3日目頃より認められる(表2)。
3. HPF-1株は展開葉の葉基部に生息し、シンビジウムの生育にともない発生してくる新葉やリード葉に蔓延するため、メリクロン苗に本菌を1回接種することにより、生育期間を通して防除効果がある(表3)。
4. HPF-1株はシンビジウムに対しては0.01-0.09mmの黒色小斑点を生じ、一部のラン科植物(ジゴペタラム、オドントグロッサム)に対し極めて弱い病原性があるが、実用上問題はない。イネ、イチゴ、アスパラガスに対しては病原性はない。
5. HPF-1株の感染によるシンビジウムの生育および開花への影響はない。
6. HPF-1株は極めて弱い病原性を有し、防除効果は非選択的であり、感染葉では内在性サリチル酸の増加が認められることから、全身獲得抵抗性である(表4)。
7. 以上のことから、HPF-1株はシンビジウム病害の生物防除資材として有効である。

[成果の活用面・留意点]
1. 本菌の接種は、生長点培養したメリクロン苗に処理すると効果的である。
2. 本菌の利用に際しては、微生物農薬としての登録が必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:ラン類に発生するフザリウム病の非病原性フザリウム菌による生物防除
予算区分:県単
研究期間:1998〜2001年度
研究担当者:市川和規、山口優子、依田睦美、内田一秀
発表論文等:
1)市川 (2002) 日植病報 68(1): 21-27.
2)Ichikawa. K. et al. (2003) J Gen Plant Pathol 69 (6) : 400 - 405.
3)特許申請(特願2001-099655、特願2001-099656)中である。

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