サトイモ萎凋病抵抗性の多芽体による幼苗検定法


[要約]
分生子懸濁液(濃度105〜107CFU/ml)にサトイモ多芽体苗の根を浸漬し、25〜30℃で30日間栽培後に、芋の生育調査または切断して発病を調査することで、抵抗性が検定できる。

[キーワード]サトイモ、乾腐症、萎凋病、多芽体苗、抵抗性検定法

[担当]千葉農総研・病理研究室、植物工学研究室、畑作物育種研究室
[連絡先]電話 043-291-9991
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
  千葉県内で発生しているサトイモ乾腐症の主因は、Fusarium oxysporum による萎凋病である。萎凋病の抵抗性品種を育成するに当たって、培養苗を用いて小面積でしかも短期間で抵抗性が検定できる方法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 「大和早生」由来のPLB苗(プロトコーム様体苗)の根を、105〜107 CFU/mlのF.oxysporum 分生子懸濁液に浸漬処理した後、連結ポットに移植し、25〜30℃のグロースチャンバー(12時間日長、約6,000lux、RH80%)内で40日間栽培すると、芋に萎凋病を発病させることができる(表1)。しかし、接種40日後において、無接種区と同等の生育を示すため、外観からの罹病株の判別は困難である(表2)。
2. これに対し、多芽体苗(茎頂培養由来苗)を用いた場合は、地際茎部の維管束の褐変株率及び芋の発病度が高く(表2)、無接種区に比べ接種30日後でも、芋の発病とともに葉柄長や葉身長などの生育抑制が明らかで(図1)、外観からの選抜が可能である。

[成果の活用面・留意点]
1. PLB苗は「大和早生」以外の品種では作出できていないが、多芽体苗は多くの品種から作出が可能なことから、新品種を育成するための幼苗検定法に適している。
2. 基準品種(感受性品種)として、「大和早生」又は「石川早生」を用いる。
3. 連結ポットに多芽体苗を移植する際、根が直接培養土に触れると根痛みを起こす。ポットの底部に培養土(1/4厚)を、その上にバーミキュライト(3/4厚)を充填し、移植時に苗の根が直接培養土に触れないようにする。
4. 接種後約10日間は苗の活着と発病を促進するために、連結ポットを入れた容器をフィルムで覆うなど保湿する。
5. この幼苗検定法はグロースチャンバー内で試験を行ったものである。選抜されたサトイモが、圃場でも萎凋病に抵抗性を示すか、今後確認を行う。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:サトイモの新品種育成(3)病害抵抗性検定技術の確立
予算区分:県単
研究機関:2002〜2003年度
研究担当者:伊藤実佐子、崎山一、小原麻里、鈴木健司、竹内妙子

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