ディルドリン残留分析へのイムノアッセイ法の有効性


[要約]
土壌とキュウリ試料におけるディルドリン残留の迅速な分析のため、ガスクロマトグラフィーの代替手法として、イムノアッセイ法を検討した。イムノアッセイ法はディルドリンが高濃度の場合は使用できるが、低濃度では分析精度が不十分である。

[キーワード]キュウリ、ドリン系農薬、土壌残留、イムノアッセイ

[担当]東京農試・環境部・機能安全性研究室
[連絡先]電話 042-524-3191
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(虫害)
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
  ディルドリンは1975年に登録失効した有機塩素系殺虫剤であるが、現在でも土壌残留している農地が存在し、キュウリに残留する事例がある。即効性のある作物吸収回避策が見出されていない現状では、残留のない作物を栽培生産するためには土壌中のディルドリン残留の有無を確認することが最も確実な方法である。また、各種の農作物の中でもキュウリは特にディルドリンを吸収しやすいことが報告されており、農産物の安全性を確保するにも、迅速な残留分析法が農業現場から強く望まれている。ディルドリンの分析は他の農薬と同様に機器を用いて行われているが、時間と費用がかかる。一方、近年各種農薬でイムノアッセイ法が残留分析法として有効であると認められてきている。そこで、土壌およびキュウリ試料におけるディルドリン残留を市販の残留農薬測定キットを用いて分析することの有効性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. シクロジエン系(ドリン類)測定キット(SDI社)を用いたイムノアッセイ法とECD検出器付きガスクロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフィー質量分析計を用いた従来からの機器分析法を比較した。イムノアッセイのための抽出溶媒としてメタノールを用いた。
2. メタノール、土壌の抽出液あるいはキュウリ磨砕液の抽出液を加えて作成した検量線は希釈液/陰性標準液(キット付属のバッファー)を加えて作成した検量線とは異なり(図1)、抽出液を加えた検量線を定量に用いる必要がある。
3. イムノアッセイ法の回収率はガスクロマトグラフィーと同様に良好である(表1)。
4. 土壌については残留濃度が0.08ppm以上であれば、ガスクロマトグラフィーとイムノアッセイ法による分析値がほぼ同様であった。一方、0.08ppm未満ではガスクロマトグラフィーによる分析値とイムノアッセイ法による分析値は一致しない(図2)。
5. キュウリについては残留濃度が0.01〜0.05ppmの範囲で、イムノアッセイ法による分析値がガスクロマトグラフィーによる分析値より高くなり、両法の分析値はまったく一致しない(図3)。
6. 以上から、市販キットを用いたイムノアッセイ法は、土壌試料で残留濃度が高い場合には、簡易な分析法として適用可能であるが、低濃度では分析精度が不十分である。一方、キュウリ試料では、基準値(0.02ppm)付近の残留濃度で両法の分析値が全く異なることから、イムノアッセイ法は簡易な分析法として適さない。

[成果の活用面・留意点]
1. 試料中の残留濃度が低い場合、イムノアッセイ法による分析値を精度よく出すためには濃縮操作が必要と考えられる。
2. 試料を濃縮してイムノアッセイ法で分析する場合には、夾雑物の影響が大きくなると予想されることから、夾雑物を取り除くための精製操作を検討することが必要になる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:ドリン系農薬残留の実態把握および対策
予算区分:都単
研究期間:2003年度
研究担当者:橋本良子
発表論文等:橋本(2003)関東病虫研報50:185-188.

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