サトイモ用移植機が利用できるサトイモセル成型苗の育苗方法と栽培管理法


[要約]
サトイモ種イモを頂芽切除後分割し、セルトレイで育苗することにより、サトイモ用半自動移植機が利用できる。本育苗方法は、種イモ必要量が約4分の1となり、種苗コスト削減ができる。収量は、定植直後からのかん水管理で慣行栽培と同等となる。

[キーワード]サトイモ、種イモ分割、セル成型苗、サトイモ用移植機、種苗コスト削減

[担当]新潟農総研・園芸研・栽培・施設科、基盤研究部
[連絡先]電話 0254-27-5555
[区分]関東東海北陸農業・総合研究
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  サトイモ栽培における高額な種イモ費用は、新規に経営導入する際や生産農家が種イモの更新、規模拡大をしたい場合の阻害要因となっている。
 そこで種イモの必要量が削減でき且つ機械定植が可能な、分割種イモを利用したセル成型苗の育苗方法と栽培管理法を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 育苗方法
(1) セルトレイは、タバコ移植機用セルトレイ(72穴:42mm角、深さ45mm、55穴:45mm角、深さ50mm)を使用し、育苗培土は市販の野菜育苗用培土に微粒の被覆燐硝安カリ40日タイプ又は70日タイプを、育苗培土1リットル当たり窒素成分で250mg(肥料現物で約1.8g)を混和する。育苗手順は、図1に従って行う。
(2) 本育苗方法では、(1)頂芽部分を切除後、珪酸塩白土で種イモ全体を粉衣し、(2)脇芽発生・分割後のイモ片は、種イモ消毒を行う。
(3) 育苗日数は、出芽後のハウス内での育苗を温床上で行う場合30〜40日程度、無加温ハウス内で行う場合、約60日要する。
2. 定植方法および定植後の管理
(1) 展開葉が畝(マルチ)面と同じ位の高さとなるように定植し、覆土は根鉢が隠れる程度に行う。
(2) 定植後の畝内土壌の乾燥が、活着不良やその後の生育不良につながりやすい(表1)。通路かん水等で畝内の土壌が乾燥しないように管理することで、収量は慣行育苗と同程度になる(図2)。
3. 本育苗方法のメリット
(1) 種イモには、子イモ・孫イモや極小イモ(20g以下の孫・ひ孫)について使用可能で、慣行の約4倍のイモ数を確保できる(表2)。
(2) 育苗経費は、購入種イモを使用した場合に削減効果が大きく、セル成型苗育苗の方が慣行育苗に比べ10a当たり約7万円削減できる。ただし、育苗にかかる時間は10a当たり7時間増加する(データ略)。
(3) セル成型苗は、サトイモ用半自動移植機で支障なく定植できる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
(1) 品種「大和早生」の黒マルチ栽培での検討結果である。
(2) 頂芽切除・分割作業時に、病気や腐敗がみられたものは使用しない。
(3) 砂土以外の土性で栽培された種イモは、子イモは腐敗が多いため孫イモのみを使用する。
(4) 極小イモは、頂芽を生育させるため、分割は行わず、55穴セルトレイで育苗する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:転換畑におけるサトイモ等野菜生産のための種苗生産と省力・低コスト技術の開発
予算区分:国補(地域基幹研究)
研究期間:1999〜2003年度
研究担当者:前田 浩、羽田野一栄、牛腸奈緒子、谷内田 学
発表論文:前田(2002)園芸学会北陸支部

目次へ戻る