玄米低温貯蔵庫を用いた過酸化石灰粉衣籾の保存期間の拡大


[要約]
水稲直播栽培において、過酸化石灰粉衣籾の15℃・3〜5日間の保存は、従来の加温処理に匹敵する出芽促進効果が得られる。玄米低温貯蔵庫を利用した保存と従来の加温処理を組み合わせることにより、1回の粉衣作業で最高6日の播種が可能で、作業の効率化が可能となる。

[キーワード]水稲、直播、過酸化石灰粉衣、加温処理、玄米低温貯蔵庫

[担当]富山農技セ・農業試験場・機械営農課
[連絡先]電話 076-429-5280
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  水稲直播栽培における過酸化石灰粉衣籾の加温処理は播種から出芽までの日数の短縮および苗立ちの安定化に有効である。2000年頃から富山県西部を中心に加温処理技術が導入されたが、蒸気式育苗器を利用する必要があること、出芽促進効果を長期間維持できず、1度の粉衣作業で最高2日分の播種などが問題となっている。そこで、過酸化石灰粉衣籾の加温処理と玄米低温貯蔵庫での保存を組み合わせることにより、1回の粉衣作業で最高6日の播種が可能となり、作業の効率化を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 保存条件が10℃以下・3日間以上では、従来の加温処理より出芽促進効果は劣る。保存温度が15℃で、保存期間3〜5日間で出芽率が高く、加温処理にほぼ匹敵する出芽促進効果が得られる。また、保存条件が20℃・3〜5日間で加温処理以上の出芽促進効果が得られる(図1)。一方、保存温度が低い場合や保存期間が長い場合、出芽率の変動が大きく、出芽促進効果が不安定となる。
2. 播種時の粉衣籾に、保存温度が10℃以下では、胚付近の亀裂などの変化は認められない。一方、保存温度が15℃以上の場合、粉衣籾に亀裂や発芽籾が認められ、その割合は保存温度が20℃、また保存期間が長い場合に高い。20℃保存では保存期間3日以上になると、機械播種の障害となると考えられる根が伸長した発芽籾の割合が高くなる(表1)。
3. 出芽促進効果および機械播種への適応の両面から、保存の最適条件は15℃・3〜5日間である。保存適温が15℃であることから、玄米低温貯蔵庫の利用が有効であり、玄米低温貯蔵庫における保存と蒸気式育苗器における加温処理を組み合わせることで出芽促進効果を高めつつ、1回の粉衣作業で最高6日の播種が可能となり、粉衣から加温処理におよぶ作業の効率化が可能となる(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 過酸化石灰粉衣籾は粉衣後1時間程度風乾した後に、ビニール袋に入れて保存する。
2. 保存後過酸化石灰粉衣籾の表面が濡れている場合は、むしろなどに広げて1時間程度風乾した後に播種する。
3. 20℃以上の高温での保存や15℃・7日間以上の保存は、播種前に根や芽を伸長させ、播種時に障害を与える危険があるため避ける。
4. その他の留意点は、加温処理技術と同じである。加温処理による出芽促進安定化技術の詳細については「北陸農業研究成果情報 第17号 P11〜12」を参照する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:コシヒカリの良食味生産技術組立実証試験
予算区分:県単
研究期間:2000年度〜
研究担当者:野村幹雄、高橋 渉、鍋島弘明、尾島輝佳
発表論文等:野村ら(2003)北陸作物学会報38:25-28.

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