莢先熟抑止のための大豆潅水時期


[要約]
干ばつ条件下において、大豆の開花後11〜24日(莢伸長期)または開花後25〜42日(粒肥大期)に潅水することにより、開花数は増加し、その結果稔実莢数が確保されるため、莢先熟株の発生を抑止できる。

[キーワード]大豆、潅水、莢先熟

[担当]富山農技セ・農業試験場・機械営農課
[連絡先]電話 076-429-5280
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  富山県では平成8年および12年に大豆の莢先熟株が発生した。莢先熟の主な発生要因は、大豆の生育量と稔実莢数のアンバランスと考えられ、近年発生した莢先熟の原因の一つに生育中期の干ばつによる稔実莢数の減少が挙げられた。
 一方、大豆は生育中期に多くの水分を必要とし、県では頂小葉の角度を目安に潅水指導を行ってきたが、大豆の生育ステージに対する有効な潅水時期は明確でなかった。
 そこで、生育中期の土壌水分が大豆の開花や着莢、子実肥大に及ぼす影響を明らかにするとともに、稔実莢数を確保し莢先熟を抑止するのに適した潅水時期を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 生育中期の土壌含水率を0.27〜0.28g/g程度に高めると、開花期間が長くなり、開花数は増える(表1図1)。
2. 莢伸長期(開花後11〜24日)または粒肥大期(開花後25〜42日)の潅水によって、開花日数が長くなるとともに、開花数および稔実莢数が多くなる。また、大粒比率や百粒重、子実重は高くなる(表2)。
3. 以上のことから、干ばつ条件下においては、開花後11〜24日(莢伸長期)または開花後25〜42日(粒肥大期)に潅水することによって、成熟期における1節当たりの稔実莢数が多くなり、莢先熟株の発生を抑止できる(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 沖積砂壌土で排水が良好な圃場で活用できる。
2. 開花期以降の気象が高温少雨で推移した場合、潅水によって土壌含水率を0.27〜0.28g/g程度に維持する。なお、この土壌含水率を維持するためには、概ね3〜4日に1回を目安に畦間潅水をする。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:生育中期の土壌水分管理と大豆の生理作用の解明
予算区分:委託(ブランド・ニッポン)
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:尾島輝佳(富山農改セ)、荒井清完、高橋渉、野村幹雄

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