チューリップ微斑モザイク病に対する品種抵抗性の評価


[要約]
チューリップ微斑モザイク病に対する抵抗性には品種間に大きな差が認められる。この抵抗性は、圃場での感染と球根伝染の難易として示すことができる。抵抗性極強品種の伝染源ポテンシャルは低く、抵抗性弱品種に比べて圃場のウイルス汚染程度を高めない。

[キーワード]チューリップ、微斑モザイク病、TMMMV、品種抵抗性

[担当]富山農技セ・野菜花き試験場・花き課
[連絡先]電話 0763-32-2259
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境、共通基盤・病害虫
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  チューリップ微斑モザイクウイルス(TMMMV)によって引き起こされるチューリップ微斑モザイク病はOlpidium brassicaeによって媒介される難防除病害である。本病のような土壌伝染性のウイルス病による被害を回避するには、抵抗性品種の利用が最も有効である。そこで、国内の主要品種について本病に対する抵抗性を評価し、抵抗性品種を利用した安定生産および抵抗性新品種の育成を推進する。

[成果の内容・特徴]
1. 本病発生圃場で2作、健全土(ポット)で1作した214品種のTMMMV感染率には3年間を通して品種間に大きな差が認められる(図1)。
2.. 2作目の感染率で抵抗性程度を極強〜極弱の5段階に評価した場合(一部の品種は球根伝染率を考慮して補正)、全体の20%が極強または強と判定される(表1)。
3. 品種分類群と抵抗性程度の間には明らかな関係は認められないが、Fosteriana群(F)に属する品種に抵抗性強の品種が多い(表1)。また、‘Gander’の枝変わり品種やその子孫品種には抵抗性強品種が多い。
4. TMMMVの感染そのものが少ない品種およびウイルスの球根伝染率が極端に低い品種が存在し(図1、III・IV)、これらは抵抗性品種を育成する上での素材として有望である。
5. 抵抗性極強と判断された品種は、本病の伝染源ポテンシャルは低い(図2)。さらに抵抗性弱品種に比べて圃場のウイルス汚染程度を高めない(表2)。よって、抵抗性品種の利用は本病の被害軽減に有効である。

[成果の活用面・留意点]
1. 現地における品種選定に活用される。また、抵抗性品種の育成に利用できる。
2. 品種の抵抗性は完全ではないことから、本病を防除するには罹病株の抜き取り等の基本防除技術も同時に講じる必要がある。
3. 抵抗性品種の育成を目的に交配母本を選定する場合、媒介菌O. brassicaeの感染に影響する発根の早晩など、各品種の特性も抵抗性に関与していることを考慮する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:土壌伝染性ウイルスの生物的制御技術の開発
予算区分:指定試験
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:守川俊幸、多賀由美子、森井 環

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