富山県におけるネギ疫病による根腐れ症状の発生と薬剤効果


[要約]
ネギ疫病は主に葉に発生するとされているが、富山県内では茎盤部から腐敗が進行する根腐れ症状が多発している。本病は薬剤を植溝処理または茎葉散布することにより発病を抑制できる。

[キーワード]ネギ、疫病、Phytophthora nicotianae、根腐れ症状、薬剤防除

[担当]富山農技セ・農業試験場・病理昆虫課
[連絡先]電話 076-429-5249
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  富山県では1990年頃から、ネギ疫病菌による根腐れ症状を伴う株腐れが広範囲で確認されている。ネギ疫病は主に葉に症状が発生するが、本県では葉の症状が認められない圃場においても多発する。そこで本病の診断法と薬剤防除対策を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 富山県で発生するネギ腐敗性病害の発生状況調査の結果、多くの圃場で疫病によるものが認められる(表1)。本病は梅雨期から発生が認められ、その後急速に発生が増加する(図1)。
2. 本病は茎盤部付近から発病し、初期は内部の葉鞘基部で腐敗が進行し、萎縮するが発病を外観から確認できない(図2)。腐敗が進行すると軟腐病や萎凋病との識別が困難となる。患部からPhytophthora nicotianaeが分離され、分離菌を健全ネギに接種すると葉及び根のいずれに対しても病原性が確認される(データ略)。
3. メタラキシル粒剤の定植時散布(5kg/10a)、またマンゼブ・メタラキシル水和剤(1000倍100L/10a)、ホセチル水和剤(800倍100L/10a)及びオキサジキシル銅水和剤(500倍100L/10a)の3剤では定植後約20日ごとに3回茎葉散布することで発病を抑制できる(図3)。また、汚染土壌で発病後にマンゼブ・メタラキシル水和剤(1000倍100L/10a)を1回散布した場合には収穫調整後の本数や重量の増加が認められる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. ネギ根腐れ症状の病害診断と防除対策に役立つ。
2. 効果の認められる剤のうち、ホセチル水和剤はネギ疫病に対して既登録であるが、現在のところメタラキシル粒剤はネギに対して、マンゼブ・メタラキシル水和剤及びオキサジキシル銅水和剤はネギ疫病に対して農薬取締法に基づく登録がされていないので、試験研究以外には使用できない。
3. 本県では葉の症状が発生しにくい状況下で根腐れ症状が発生することが多いが、その要因については不明である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:難防除病害虫防除技術確立試験  白ネギ病害虫防除対策試験
予算区分:県単
研究期間:1999〜2004年度
研究担当者:梅沢順子、守川俊幸、向畠博行

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