アカヒゲホソミドリカスミカメ合成性フェロモンの交信攪乱効果


[要約]
野外でアカヒゲホソミドリカスミカメの合成性フェロモンを高濃度で揮散させると、雄は雌に定位できず、交信攪乱が起こる。

[キーワード]イネ、アカヒゲホソミドリカスミカメ、合成性フェロモン、交信攪乱

[担当]中央農研・北陸水田利用部・虫害研究室
[連絡先]電話 025-526-3243
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境、共通基盤・病害虫(虫害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  アカヒゲホソミドリカスミカメは、斑点米を発生させコメの品質を著しく低下させる。本種雌は、性フェロモンを放出し雄を誘引する(Kakizaki and Sugie、1997)。さらに、その成分も明らかにされ、性フェロモンの合成が可能となった(Kakizaki and Sugie、2001)。そこで、野外において合成性フェロモンを利用し、交尾行動を阻害する交信攪乱効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 合成性フェロモンは、有効な3成分 n-hexyl n-hexanoate、(E)-2-hexenyl n-hexanoate、n-octyl n-butyrate を1000:400:30の比率で混合したものをゴムキャップに担持させる。
2. 野外の雑草地で、5m四方の区画の四隅に合成性フェロモン10mgを担持させたゴムキャップを地上45cmの高さに配置し、中央部に未交尾雌10頭を誘引源とした水盤トラップを設置する(フェロモン(40mg)区)。また、フェロモン区から30m離れた場所に、対照区として5m四方の区画の四隅にゴムキャップのみを配置した区を設け、中央部に雌を誘引源とした水盤トラップを設置する。水盤トラップに誘殺される雄数は、フェロモン区で少ない傾向があるが、誘殺数に有意差はない(表1)。
3. 5m四方の区画に1m間隔で格子状に合成性フェロモン10mgを担持させたゴムキャップ36個を配置する(フェロモン(360mg)区)。また、対照区として5m四方の区画にゴムキャップのみを36個配置する。両区の中央部に雌を誘引源とした水盤トラップを設置する。フェロモン区の水盤トラップにはほとんど雄は誘殺されない(表2)。
4. フェロモン(360mg)区と対照区ですくい取りを行ったところ、雌雄ともにすくい取り虫数に有意差はない(表3)。したがって、合成性フェロモンの濃度が高くても、成虫に対し忌避的な効果はない。
5. 以上より、野外で合成性フェロモンを高濃度で揮散させると、雄は雌に定位できない、すなわち、交信攪乱が起こっている。

[成果の活用面・留意点]
1. 本種の防除法として、交信攪乱法を開発するための基礎的資料となる。
2. 野外で合成性フェロモンを高濃度で揮散させると、雄は雌に定位できないが、その結果として交尾率の低下が起こっているかどうかを調査する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:合成性フェロモンを活用したアカヒゲホソミドリカスミカメの防除技術の開発
課題ID:03-11-03-01-09-03
予算区分:交付金
研究期間:2003〜2007年度
研究担当者:樋口博也、高橋明彦、福本毅彦(信越化学)、望月文昭(信越化学)
発表論文等:
1)樋口ら(2003) アカヒゲホソミドリカスミカメの発生予察方法 特願 2003-196208
2)樋口ら(2003) アカヒゲホソミドリカスミカメの交信攪乱剤及び交信攪乱法 特願 2003-196209

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