搾乳牛群編入時における初産牛及び経産牛の行動


[要約]
フリーストールにおいて分娩後に搾乳牛群に編入した乳牛の行動は、編入当初は採食行動と横臥行動が十分に行えず、その傾向は経産牛に比べて初産牛に強く現れる。

[キーワード]フリーストール、牛群編入、行動様式、序列、血中グルコース、乳用牛

[担当]茨城畜セ・酪農研究室
[連絡先]電話0299-43-3333
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 フリーストール牛舎では乳牛の行動が自由なため、分娩後に搾乳牛群に編入する乳牛は、社会的序列が上位の牛による採食行動及び休息行動の妨害により、生産性を落とす可能性がある。特に搾乳牛群への編入が初めてとなる初産牛は、経産牛に比べその影響を強く受けると思われる。
 本研究は分娩牛の搾乳牛群編入時の行動を調査し、初産牛と経産牛の行動の違いを検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 分娩予定の初産牛、経産牛を各4頭供試する。牛群頭数は搾乳牛群が約40頭、編入  前の育成及び乾乳牛群が共に約5頭である。ストール数は搾乳牛群が48、乾乳、育  成牛群が各12である。調査は連続観察とし、調査日は分娩3週間前(以下、3週間  前)、搾乳牛群編入1日目(以下、1日目)、搾乳牛群編入3日目(以下、3日目)、搾  乳牛群編入1ヵ月後(以下、1ヵ月後)である。調査時間はそれぞれ10:30から17:00  までである。試験牛の搾乳牛群への編入は分娩後6日目である。
2. 経産牛の1日目と3日目の採食時間は共に約70分である。しかし、初産牛の1日目  は47.8分で経産牛に比べ約20分少ない。3日目は約70分と経産牛と同等である。1  ヵ月後は共に増加する。1日目の昼と夕の給餌後2時間では、初産牛が経産牛に比べ  少ない(表1)。
3. 横臥時間は初産牛、経産牛共に1日目が少なく、3日目及び1ヵ月後は増加する傾向  である(表2)。
4. 攻撃回数は1日目で初産牛が経産牛の半分である。初産牛、経産牛共に3日目、1ヵ  月後は減少する傾向である。一方、攻撃された回数は1日目で初産牛が経産牛に比べ  多い。初産牛、経産牛共に3日目、1ヵ月後は減少する傾向である(表3)。
5. パーラー入室順位は、初産牛が約40頭中28.4位と経産牛の20.9位に比べて低く、社  会的序列が低くなる傾向である。
6. 搾乳牛群編入後の血中グルコース濃度は、初産牛が経産牛に比べて高く推移し、スト  レスによる可能性が考えられる。(図1)。
7. 1日目に対する1ヵ月後の体重の割合は初産牛が95.1%、経産牛が98.1%で、初産牛は  経産牛に比べ体重の回復が遅い傾向である。
8. 乳牛を分娩後搾乳牛群に編入した場合、編入当初は採食行動と休息行動が十分に行え  ない。特に採食行動に関しては、3日間以上はその状態が続く。その傾向は初産牛に  強く現れ、体重の回復が遅れる傾向にある。また、初産牛は牛群内の社会的序列が低  いため、経産牛に比べてストレスを受ける可能性が高いと思われる。

[成果の活用面・留意点]
1. フリーストール方式導入農家及び導入予定農家の指導において活用する。
2. 本研究は一群管理におけるデータである。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:酪農経営生産性向上に関する試験
     (乳用牛群の省力的管理法及びTMR給与法の検討)
予算区分:県単
研究期間:2000〜2003年度
研究担当者:石井貴茂、楠原徹、宇田三男
発表論文等:石井ら(2004)茨城畜セ研報37:39-47.

目次へ戻る