体細胞クローン金華豚の後代産子の産肉性と肉質


[要約]
体細胞クローン金華豚の産子6腹44頭の産肉性と肉質を調査した。その結果、クローン産子は、発育、枝肉形質及び肉質において一般の金華豚の特徴を有する。

[キーワード]ブタ、体細胞クローン、後代産子、金華豚、産肉性、肉質

[担当]静岡県中小畜試・養豚研究スタッフ
[連絡先]電話0537-35-2291
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]科学 ・ 参考

[背景・ねらい]
 凍結受精卵による保存技術が確立されていないブタの遺伝資源の保存法について、クローン技術を活用し、体細胞で保存することの有用性について検討するため、体細胞クローン金華豚の後代産子について産肉性、肉質を通常繁殖の金華豚やデュロック種と比較する。

[成果の内容・特徴]
1. 体細胞クローン金華豚6頭に通常繁殖の一般金華豚の精液を人工授精して得られた後代産子(クローン産子)44頭の生時体重は、0.74kgと一般の金華豚(対照金華豚)やデュロック種に比べ有意に低値である(表1)。
2. クローン産子の一日あたり増体量は、30kgまでは対照金華豚と同程度、30〜70kgまでは対照金華豚より優れるが、デュロック種と比較すると全期間を通じて低値でその差も大きい(表1)。
3. クローン産子の枝肉は、デュロック種に比べロース断面積が小さく、背脂肪が各部位ともに厚い金華豚の特徴を有している(表2)。
4. クローン産子の肉は対照金華豚と同様で、デュロック種に比べ、水分含量が低く、脂肪含量が高い(表3)。
5. クローン産子の肉は、ウィープロス(保水力)に差は無かったが、シェアバリュー(柔らかさ)は対照金華豚と同様で、デュロック種に比べ優れている(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. クローン産子は枝肉形質や肉質において、金華豚の特徴を有しており、体細胞クローン技術を利用して遺伝資源の保存が可能と思われる。
2. ブタ体細胞核移植技術を野外で活用するには、その特性を十分に調査した上で、一般の理解を得ることが必要である。
3. 体細胞核移植技術の成功率はまだ低く、食肉としての利用はクローンの産子もしくはその子孫の活用が適当と思われる。そのため、今後クローンブタ同士の産子の肉質や食肉としての安全性などを調査することが必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:体細胞クローンブタの種ブタとしての有用性検証
予算区分:国庫
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:柴田昌利、土屋聖子、大竹正剛、河原崎達雄
発表論文等:柴田ら(2004) 静岡県中小家畜試験場研究報告 第15号:35-38.

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