耐倒伏性に優れるイタリアンライグラス早生新品種「はたあおば」


[要約]
耐倒伏性に優れ、多収な早生イタリアンライグラス新品種「はたあおば」を育成した。耐倒伏性は強の「ニオウダチ」と同等で、「ワセアオバ」、「タチワセ」より強い。積雪の少ない温暖地域における1番草平均収量は「ニオウダチ」に比べて18%多い。

[キーワード]育種、イタリアンライグラス、早生、耐倒伏性、多収

[担当]茨城畜セ・飼料研究室
[連絡先]電話0299-43-3333
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]技術 ・普及

[背景・ねらい]
 ロールベール体系が普及し収穫体系が大規模化した飼料生産現場では、耐倒伏性および収量性共に優れた品種が求められている。耐倒伏性が強い「ニオウダチ」は収量が低く、多収な品種は耐倒伏性が不十分であり、温暖地における両者を兼ね備えた品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 耐倒伏性に優れ、収量性にも優れる早生2倍体品種を育成した。
2. 出穂始日は「ニオウダチ」、「ワセアオバ」と同程度であり、「タチワセ」より1日遅い(表3)。
3. 積雪の少ない温暖地域における乾物収量は「ニオウダチ」比で1番草で118%、2番草までの合計収量で111%と多収であり、「ワセアオバ」、「タチワセ」と比較して同程度かやや多収である(表1表2)。
4. 耐倒伏性は”強”の「ニオウダチ」と同等で、「ワセアオバ」および「タチワセ」より強い(表3)。
5. 草丈は「ニオウダチ」と同程度で「ワセアオバ」より低い(表3)。
6. 耐雪性は”弱”である(表3)。
7. 冠さび病抵抗性は”中”である(表3)。
8. 採種量は「ニオウダチ」、「ワセアオバ」と同程度かやや多い(表3)。
9. 春播性は「ニオウダチ」より高く、「ワセアオバ」と同等であり「タチワセ」より低い(表3)。
10. 粗蛋白質、乾物分解率、ADFは「ニオウダチ」および「ワセアオバ」と差がない(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 積雪の少ない温暖地域(およその目安は根雪期間40日程度まで)に適する。普及見込み面積は全国で約3,000haである。
2. いもち病抵抗性は弱いので早播はさける。
3. 種子は平成18年より市販される予定である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:イタリアンライグラス早生系統の育成(はたあおば)
予算区分:指定試験
研究期間:1992〜2002年度
研究担当者:矢萩久嗣、上山泰史、津田公男、深沢芳隆、大浦俊彦、寺沼昇、真鍋幸子、井上雅美、羽成勤、御幡寿
発表論文等:
1)2004年(平成16年)2月命名登録 イタリアンライグラス農林20号「はたあおば」
2)矢萩ら(2004)茨城畜セ研報37:49-69.

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