農家で製作可能な予乾型ロールベーラ用乳酸菌添加装置


[要約]
農家で製作可能な安価で簡易な予乾型ロールベーラ用乳酸菌添加装置を開発した。これにより、高品質な飼料イネサイレージ等の調製が可能である。

[キーワード]飼料イネ、乳酸菌、添加装置、予乾体系、ロールベーラ、ウシ

[担当]埼玉農総研・畜産研究所・飼料・加工担当
[連絡先]電話048-536-0311
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 飼料イネは全国的な普及、増産傾向にあり、品種育成、乳酸菌開発等の増産、品質改善技術が進んでいる。特に乳酸菌開発では飼料イネ用に畜草1号が開発、販売されている。
 飼料イネ専用収穫機では付属の乳酸菌添加装置で乳酸菌の添加が可能であるが、従来の予乾型ロールベーラでは市販の添加装置を取り付ける以外では乳酸菌添加が困難である。そこで、農家で製作・設置が可能な安価で簡易な乳酸菌添加装置を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 乳酸菌添加装置はトラクタのバッテリ駆動式で、タンクからポンプで溶液を吸い上げ、ノズルで散布する(図1)。表1に添加装置の必要部品を示す。簡易な構造であり、5万円程度で自作可能である。なお、ロールベーラの種類によりタンク、ポンプ、ノズルの取り付け位置の検討が必要である。ポンプ、コネクターは防水処理を検討する。
2. 添加量はロールベール1個の重さで決め、ロールベール成形時間で設定添加量になるように噴出量の切替(L・H)とノズル(3種類)を調整する。添加量は50gの乳酸菌を20リットルに溶解した場合、材料10tの処理が可能である。例えば、ロールの重さを350kgとすると20リットルで約28.6個の処理が可能であり、1個あたりの添加量は約700ccとなる。ロール1個作るのに約3分30秒かかる場合は、SU-02-80の噴口でコックをHで使うと添加量は約700ccとなる(表2)。なお、コックは戻し量を調節するので高い方がLになるので注意が必要である。
3. 添加装置の普及に向けて、デモ機を製作し、県内で2回説明会を行った。また、希望農家4戸に出向き、添加装置を取り付け、実証試験を行った。その利用状況は飼料イネ:2戸380a、イナワラ:1戸50a、雑草:1戸200aであった。
4. 表3に本装置を用いて畜草1号を添加した農家事例の発酵品質を示す。飼料イネWCSではpHの低下、乳酸の増加、酪酸の低下がみられ、発酵品質が改善された。また、雑草サイレージでも同様の傾向がみられた。

[成果の活用面・留意点]
1. 予乾体系のロールベーラでの乳酸菌添加が可能になる。飼料イネへの添加はもちろん生イナワラでの活用、2番草以降のイタリアンライグラス、雑草、スーダン、ソルゴー等への添加も可能である。雨に当たって高水分の場合の品質低下防止、イナワラや雑草のサイレージ利用などに活用できる。
2. 乳酸菌発酵条件に合わせた調製を行う。水分率は60%前後とし、梱包密度も固めで、密封を保つ等を配慮した調製が必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:尿素処理による飼料イネの品質安定化と広域搬送技術の確立
予算区分:委託ブラニチ3系
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:山井英喜、岡部富雄、小川和雄、飯島雄二、馬場和彦、柴崎誠次、
      吉田宣夫、蔡義民

目次へ戻る