稲発酵粗飼料を素材にしたTMRロールベールサイレージの好気的安定性


[要約]
稲発酵粗飼料を素材にして細断型ロールベーラで調製したTMRロールベールサイレージは、通常の未発酵TMRに比べて好気的変敗を抑制する。

[キーワード]細断型ロールベーラ、TMR、ロールベール、サイレージ、好気的変敗

[担当]三重科技セ・畜産研究部・大家畜グループ
[連絡先]電話0598-42-2029
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(草地)
[分類]技術・ 参考

[背景・ねらい]
 飼料イネの利用拡大を図るため、細断型ロールベーラを利活用した稲発酵粗飼料主体のTMRロールベールサイレージの調製技術が開発された。これにより調製されたサイレージの発酵品質は、乳酸発酵が顕著に促進され極めて良質である反面、良質であるがゆえの問題点として好気的変敗が懸念される。
 そこで、通常の未発酵TMR(以下通常TMRと略す)とこれを素材に調製したTMRロールベールサイレージの好気的安定性について比較検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 約9ヶ月間貯蔵した稲発酵粗飼料の発酵品質はVスコア67と中程度であるが、細断型ロールベーラを用いてTMRロールベールサイレージとして再度調製した場合、乳酸発酵の促進と酪酸生成が抑制され良質なサイレージが調製できる(表1)。
 なお、供試TMR(CP16%、TDN74%)は加水し水分含量を43.9%に調整している。飼料原料の乾物配合割合は、乳牛用自家配合飼料(CP25%、TDN90%)49%、稲発酵粗飼料22%で、その他チモシー乾草、ビートパルプを用いている。
2. 環境温度23℃に設定した好気的条件下における通常TMRの品温は、調製後約10時間あたりから上昇が始まり、24時間の間に急激に上昇する。一方、TMRロールベールサイレージは、時間の経過とともに室内温度に近づき24時間以内での温度上昇は認められない(図1)。
 なお、経過時間0時間は、通常TMRは調製直後、TMRロールベールサイレージは  開封直後のサンプルの温度を示す。
3. 通常TMRは、pH、VBN/TN、酵母、糸状菌が増加し、乾物損失率も高く24時間の間に好気的変敗が進行する(表2)。
4. 発酵TMRは、乾物損失率が若干増加するが、pH、有機酸、微生物叢は極めて安定しており24時間の間では好気的変敗は認められない(表2)。
5. バンクライフ(室内温度と品温の差が2℃を示すまでの期間)は、通常TMRに比べて発酵TMRが長く、好気的安定性に優れる(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 発酵TMRは品質面、好気的安定性ともに優れ、飼槽内での好気的変敗防止対策に有効である。
2. 本成果の内容は、実験室レベルでの結果であるため、実レベルでの検討が必要である。
3. 細断型ロールベーラを利用したTMRロールベールサイレージ調製のプラント化も含 め、生産コストについても今後検討する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:飼料イネのTMRロールベールサイレージ化による乳牛への給与技術の開発
予算区分 :国庫委託(ブランドニッポン3系畜産)
研究期間 :2003〜2005年度
研究担当者:平岡啓司、山本泰也、田中善之、小出勇、乾清人、浦川修司

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