牛ふんの水分調整に減圧乾燥機を利用した堆肥化処理


[要約]
高水分の牛ふんを、減圧乾燥機で堆肥化可能な水分まで調整することで副資材が不要となり、同容積の堆肥化処理施設で原料換算3倍程度処理できる。減圧乾燥堆肥は、オガクズ等の難分解性有機物が少ないため有機物分解率が大きく、発芽試験による生育阻害作用の消失も早い。

[キーワード]家畜ふん尿、減圧乾燥、乳牛ふん、堆肥化、

[担当]静岡畜試・ゼロエミッション堆肥プロジェクト
[連絡先]電話0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 「家畜排泄物法」の施行により、堆肥化施設の整備が進み堆肥は供給過剰傾向にある。タンク内減圧により沸点を下げ効率良く乾燥させる減圧乾燥法で、高水分の乳牛ふんを堆肥化可能な水分まで調整することで、水分調整資材を利用しない堆肥化が可能となり、同時に処理施設の減容と堆肥生産量の減少を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 減圧乾燥機(タンク容量100L)で水分86%の乳牛ふんを乾燥する場合、水分70%程度までが単位時間あたりの蒸発量が多く乾燥効率が高いので(図1)、通気性が確保できる水分70%程度まで乾燥させ堆肥化する方法がよい。
2. 水分86%の乳牛ふんを減圧乾燥で水分70%に乾燥した材料(以下「減圧区」)とオガクズを混合して水分70%に調整した材料(以下「オガクズ区」)で比較すると、小型堆肥化実験装置(容積14L)において減圧区の方が発酵温度が高く推移する(図2)。また、堆肥化後の有機物分解率およびデタージェント繊維分画の分解率を比較すると、減圧区は難分解性有機物(酸性デタージェント繊維)が少ないため、有機物分解率が41.6%とオガクズ区(19.0%)より高い (図3)。さらに、コマツナの発芽試験によれば、減圧区では2週間目に根長指数93.6%と有意に改善され腐熟速度が速い(表1)。なお、県内2戸の酪農家に減圧乾燥機が導入されているが、堆肥化1週間程度でウシグソヒトヨダケが発生しており2週間程度で製品として販売している。
3. 減圧乾燥で水分調整後に堆肥化する場合、堆肥化施設に必要となる容積がオガクズで水分調整する方法と比較して1/3程度になると試算される。
4. 酪農家に設置された減圧乾燥機(タンク容量2400L)の事例では、最大2.4t/日の処理能力である。減圧乾燥機の設置費24,570千円、施設の建築費1,680千円、維持管理費2,371千円/年で、年間1頭当たり112千円(搾乳牛50頭規模、耐用年数機械7年施設20年で計算)である。

[成果の活用面・留意点]
1. 気象の影響を受けない乾燥方法であるため全国で導入可能である。臭気成分が蒸発水中に回収されるため、浄化槽へ入れるなど臭気対策が必要。
2. 乳牛以外にも養豚、養鶏でも適用可能であるが、豚ふんの場合は乾燥中に団子状に固まるため乾燥効率が落ちる。
3. 導入する場合は、現有する堆肥化施設の処理能力、水分調整資材の購入費と入手の難易、堆肥需要等を勘案し、導入維持コストとのバランスに留意する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:減圧乾燥機を利用した堆肥生産方式の確立
予算区分:県単
研究期間:2002〜2005年度
研究担当者:芹澤駿治、望月建治、佐藤克昭、片山信也

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