未利用資源利用による家畜ふんの堆肥化


[要約]
コーヒー粕、乾燥生ゴミ、剪定枝、雑草はそれぞれの特性を考慮して、家畜ふんの堆肥化副資材として利用すると堆肥化は良好に進む。

[キーワード]未利用資源、堆肥化、コーヒー粕、生ゴミ、家畜ふん尿

[担当]茨城畜セ・環境保全研究室
[連絡先]電話0299-43-3333
[区分]関東東海北陸農業 畜産草地 (畜産環境)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 家畜ふん尿の堆肥化資材としては、従来からイナワラ、モミガラ、オガクズが一般的であるが、それらだけでは価格や流通量の点で充分とは言えない。近年、生ゴミやコーヒー粕等の食品残さ、剪定枝などの有機性資源の有効利用が求められている。そこで、それらを利用して家畜ふんの堆肥化試験を行い堆肥化副資材としての適性を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. コーヒー粕の利用では、重量比(現物)で牛ふん1に対してコーヒー粕1( 水分60%以下)を用いての堆肥化が可能である。コーヒー粕(水分60%)を水分調整材として用いた堆肥化試験では、戻し堆肥を用いた試験区より長期間高温を維持する(図1)。
2. 生ゴミ(乾燥物)の利用では、牛ふんの水分調整材としての利用が可能である。牛ふん500kgに対して乾燥生ゴミ90kgを加えた試験では、堆肥化は良好に進む。堆肥化に伴い生ゴミ中の粗脂肪分は分解する(図23)。また、生ゴミ利用堆肥化途中の易分解性有機物と粗脂肪含量は高い相関がある。生ゴミ中のナトリウム濃度は乾物中約0.5%であり牛ふんよりやや高い程度である。
3. セイタカアワダチソウやクズなどの雑草(主に道路法面)を長さ1m以下に刈り取り、堆肥舎に堆積し水分を40%程度に低下させたものを水分調整材として牛ふんの堆肥化を行うと、約4ヵ月間の試験期間中の堆肥最高温度は60℃を越え、約3週間40℃以上を維持する。終了後の堆肥は成分的にはオガクズを利用した堆肥と大きな違いはない。
4. 剪定枝を利用した豚ぷんの堆肥化では、破砕状態の違いにより堆肥化の進行に差が生じる。堆肥化試験で、破砕機(タブグラインダー)に2回かけた2次破砕剪定枝(長さ50mm以下、直径5mm以下)を使用すると、1回のみの1次破砕剪定枝(長さ50mm以下の枝の割合60%、直径5mm以下の枝の割合55%)より堆肥温度は高くなり、長い期間高温が続く。剪定枝は易分解性有機物の含有量はオガクズ以上にあるので、細切して使用すると堆肥化資材として有効なものになる。
5. 各種資材の有機物含有量を調査すると、易分解性の有機物含量は生ゴミが多く乾物中80%以上、コーヒー粕や雑草が約50%、剪定枝が約30%、オガクズが約20%になる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. コーヒー粕や雑草を水分調整資材として使用する場合、堆肥舎等に堆積させ水分含量を少なくすると使いやすい。含水率の高い生ゴミを利用する場合、必要に応じてモミガラなどで水分調整する。また、丈の高い草や蔓性の草はカッターなどで細切すると利用性が高まる。
2. 資材ごとの易分解性有機物の含有量は、家畜ふんと組み合わせたときの堆肥化の難易の目安になる。各種資材を利用した堆肥の発芽試験、ポット試験での幼植物に対する生育阻害は見られず、通常の使用量であれば圃場での施用も問題ない。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:未利用資源利用による良質堆肥化技術の開発試験
予算区分:県単
研究期間:2000〜2003年度
研究担当者:井上雅美、羽成 勤、吉尾卓宏、相沢博美
発表論文等:井上ら(2004)茨城畜セ研報37:27-37

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