ホールトマト向き加工用新品種候補「トマト桔梗交36号」


[要約]
「トマト桔梗交36号」は心止まり性で、ジョイントレス果柄を有し、果実が硬く、裂果が少なく、剥皮後の果実外観が優れ、ホールトマトの原材料生産に適する。

[キーワード]加工用トマト、心止まり性、ホールトマト、剥皮性、ジョイントレス果柄

[担当]長野中信農試・畑作育種部・農林水産省そば等育種指定試験地
[連絡先]電話0263-52-1148
[区分]関東東海北陸農業・野菜、野菜茶業・野菜育種
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 缶詰トマトの輸入が多い中で、国産原料によるホールトマトの需要も堅調である。しかし、ホールトマト向きに国内で育成された品種は、育成元の都合によりその採種がうち切られ、実需者から新たなホールトマト用品種の育成が要望された。そこで、果柄に離層が発達しないジョイントレス果柄、裂果抵抗性、圃場貯蔵性を有し、ホールトマトとしての剥皮性、剥皮後の果実外観が優れることを育種目標として育種を開始する。

[成果の内容・特徴]
1. 育成経過
「トマト桔梗交36号」は、「とまと中間母本農6号」と「93PLF3」との交雑後代から育成した「PLS2-50-4-3-2-m」を種子親とし、「しょうほう」と「NDM051」との交雑後代から育成した「T96110-1-1」を花粉親とした一代雑種である(図1)。2002〜2004年度に特性検定試験及び系統適応性検定試験を実施した結果、収量性、果実硬度、剥皮後の果実外観等が優れたことから、ホールトマト向き実用品種として有望である。
2. 特性
1) 草姿は“心止まり性”で、開張度は狭く、草型は“やや立性”で枝分け作業が必要である(表1)。
2) 果柄は離層がないジョイントレス果柄である(表1)。
3) 早晩性は“中早生”で、収量は「なつのこま」より多い。裂果率は「なつのこま」及び「カゴメ81」と同等に低い(表1)。
4) 病害抵抗性は、萎凋病レース1と半身萎凋病レース1に抵抗性である(表1)。
5) 果実は65g程度の腰高球で、硬く、ゼリー率は低い(表2)。
6) 果汁の色調は中程度で、果汁糖度及び酸度は「なつのこま」より低く、「カゴメ81」と同等、リコペン含量は「なつのこま」、「カゴメ81」より多い(表2)。
7) 剥皮の難易は中程度であるが、剥皮後の外観は優れる(表2図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 中部地方以北における手取り収穫による露地無支柱栽培に適し、ホールトマト加工原料として高い適性を示し、ケチャップ等の加工原料にも適する。
2. 開花最盛期頃の草姿がやや立性であるので、枝分け作業を早めに行い、着果を促進させる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:加工用トマト新品種の育成
予算区分:指定試験
研究期間:1999〜2004年度
研究担当者:矢ノ口幸夫、松永啓、村山敏、岡本潔

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