四季成り性イチゴ品種「サマープリンセス」を用いた夏秋どり栽培


[要約]
「サマープリンセス」の夏秋どり栽培は、4月中旬〜5月上旬定植で7〜11月に収穫でき、上物率や秋の収量向上には摘房・摘花(果)や摘房処理(中休み処理)などが有効である。また、養液土耕や高設栽培は収量や上物率が向上し、適した栽培方法である。

[キーワード]イチゴ、夏秋どり、四季成り性、養液土耕栽培、高設栽培

[担当]長野南信農試・栽培部
[連絡先]電話0265-35-2240
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 長野県南信農業試験場では、果実形状や色沢が良好で夏秋どり栽培が可能な四季成り性品種「サマープリンセス」を育成している。しかし、イチゴを高温期に栽培する夏秋どり栽培の技術には未確立の部分が多い。そこで、品種特性を活かし高品質で生産安定が図れる栽培技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 定植時期が早いほど収量は多く、7〜11月の夏秋どり栽培には4月中旬〜5月上旬の春定植がよい。秋定植は、9月までの収量が多い(表1)。
2. 上物収量を大きく低下させることなく小玉果を減少させ上物比率を向上させるには、1花房当たり5果残して摘花(果)のみ行うか、2花房残して摘房しさらに1花房当たり7果残して摘花(果)する方法がよい(表2)。
3. 盛夏季の7月下旬〜8月上旬に出蕾花房を一旦除去して収穫を休止する摘房処理(中休み処理)は、心止まり軽減と上物率及び9月〜10月収量の向上効果がある(表3)。
4. 養液土耕栽培及び高設栽培は、収量増加、小玉果減少、収穫期の平準化、心止まり軽減などの効果が認められ、水分や肥料(塩類)ストレスを受けにくいことから、夏秋どり栽培に適した栽培方法である(図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 高冷地の秋植え栽培では、露地で越冬するため凍上害により枯死する場合があり、10月上旬頃までに定植して根張りを確保する必要がある。
2. 摘房処理(中休み処理)を行うと総収量は低下するため、栽培地の標高や温度、草勢や着果状況によって判断し、全栽培株の一斉処理は避け一部の株で実施するのがよい。
3. 親株増殖などで春に採苗する場合は、「サマープリンセス」の休眠覚醒時期が南信農業試験場(標高560m)で概ね12月20日頃なので、これ以降であれば親株の定植時期は早いほど採苗子株数を多く確保できる。
4. 「サマープリンセス」の晩期(5〜6月)定植には、前年秋に採苗し秋から4月中旬までの間に調整し、冷蔵庫(-1〜-2℃)又は氷蔵庫(0℃)で貯蔵した苗が利用できる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:夏秋どりイチゴの高品質安定生産技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:木下義明、山口秀和、矢澤有紀
発表論文等:長野県(2005.3)新しく普及に移す農業技術 http://www.alps.pref.nagano.jp/hukyu/index.htm

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