夏秋トマト雨よけ栽培における放射状裂果の発生要因


[要約]
夏秋トマト雨よけ栽培における放射状裂果の発生は、灌水方法や灌水量の違いによる土壌水分の影響よりも、茎葉や果実への強い日射による影響が大きい。

[キーワード]夏秋トマト、放射状裂果、土壌水分、日射

[担当]岐阜中山間農技研・試験研究部
[連絡先]電話0577-73-2029
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 飛騨地域の夏秋トマト雨よけ栽培では、放射状裂果発生により可販収量や品質の低下をもたらし、選別作業に多大の労力を伴い、大きな問題となっている。放射状裂果発生要因は、土壌水分の急激な変化、高温、強日射等が報告されているが、その主因は明確でなく、有効な対策がとられていない。そこで、灌水方法と整枝法の違いが裂果発生に与える影響を明らかにし、今後の対策技術について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 養液土耕栽培において、灌水時刻及び量を7月中旬以降異にすると、午後5時計測の土壌pF値は、午後灌水区では低く推移し、灌水制限区では変動幅は小さくかつ高く、多量・少回数区ではpF値は1.4〜2.6と大きく変動する(図略)。この条件下では、総収量、可販収量、平均果重、総収穫果数、放射状裂果数、くず放射状裂果数は、差がみられない(表1)。
2. 整枝法を異にして栽培したトマトにおいて、果実表面の積算日射量は直立仕立て・玉出し区より茎葉による相互遮蔽がある斜め誘引仕立て区が少なかった。このとき、総収量、平均果重、総収穫果数は、差が見られないが、放射状裂果数やくず放射状裂果数は、斜め誘引仕立て区が、直立仕立て・玉出し区より少なく可販収量が多い(表2)。
3. 整枝法や果房に被覆をして日射量を異にして栽培したトマトにおいて、果実表面の積算日射量は果房被覆区、斜め誘引仕立て区、玉出し区の順に少ない。このとき、収量、平均果重、総収穫果数、くず放射状裂果数には、差がみられないが、放射状裂果数は斜め誘引仕立て区、果房被覆区、玉出し区の順に少ない(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. くず放射状裂果とは、放射状裂果の中で特に裂果程度が激しく、商品価値のないものを表す。
2. この結果より、裂果対策技術として斜め誘引仕立てや果房被覆処理が有効であると判断される。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:夏秋トマトの裂果発生要因の解明と対策技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2002〜2003年度
研究担当者:鈴木隆志、柳瀬関三
論文発表等:鈴木・柳瀬(2004)園学雑73別2:160.

目次へ戻る