分光画像を用いた温州ミカンの腐敗果判定法


[要約]
温州ミカンに生ずる水浸状の腐敗果を判別するための判定方法と判定装置を開発した。果実全周囲の分光画像に、予め作成した腐敗部と健全部を仕分ける検量式を代入し、結果を色別表示することで、直径10mm程度の水浸状の腐敗を自動的に判定できる。

[キーワード]温州ミカン、腐敗果、分光画像、近赤外イメージング

[担当]静岡柑橘試・みかん光センサープロジェクト
[連絡先]電話0543-34-4853
[区分]関東東海北陸農業・流通加工
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 温州ミカンの初期の腐敗は、果皮色にほとんど変化が見られないため、現在ミカン産地で多く用いられているRGB方式のビデオカメラを用いた選果では、検出が難しい。そこで、可視から近赤外領域までの連続した分光画像を用いたイメージングによる温州ミカンの傷み果・腐敗果の判別法について検討した。

[成果の内容・特徴]
1. イメージング分光器(Specium社製ImspectorV10)とCCDカメラ、光源(100wハロゲンランプ)などからなる装置を作成した。これは果実をのせたステージの回転角を制御しながら線分光データ(空間軸480画素、波長範囲400〜960nm)を取り込むことにより、果実の全周囲の分光画像を得ることができる(図3)。
2. 水浸状の腐敗を生じた温州ミカンを用い、作成した装置を使って分光画像を測定し、任意に選択した各矩形部分の平均吸光スペクトルを説明変数に、目的変数として腐敗を1健全を0と定めて解析を行った(図3)。
 解析方法は、判別分析としてSIMCA(Soft Independent Modelling of Class Analogy)法を、回帰分析としてPLS(Partial Least Squares)法を行い、それぞれ腐敗部と健全部を仕分けることのできる検量式を作成した(図1図2)。
3. 未知試料の分光画像にPLS法とSIMCA法で作成した検量式を代入し、結果を画像表示することでどちらも概ね腐敗部分を識別できた(図4)。
4. 図2より、PLS法では、出力された値に対し分別可能な境界値を設定し、設定値以上の値(腐敗部)について表示することで、腐敗果の判定が可能である。
 SIMCA法では、結果が「健全部のみに属する」「腐敗部のみに属する」「どちらにも属する」「どちらにも属さない」の4つに分類されて出力されるので、それぞれを色や模様で明瞭に識別できるようになり、目的とする「腐敗部のみ」或いは「腐敗部のみ」と「両方に属する」に分類されたエリアのみ表示することで、概ね腐敗果の判定が可能である(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 選果場などで腐敗果・傷果等の選別用画像判定装置として活用できる。既存の選果ラインへの導入に向けては測定時間などの問題点を解決する必要がある。
2. 本研究において作成した腐敗果判定用検量式は、同一品種のものであるため、品種等が異なる場合は、本手法を用い独自の検量式を作成するのが望ましい。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:光センサー選果機情報の活用によるCS対応青果物生産管理システムの構築
予算区分:県単
研究期間:2001〜2003年度
研究担当者:中嶌輝子、吉川公規
発表論文等:特願2004-4916

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