農業生産においてアジピン酸エステル汚染の可能性は少ない


[要約]
農業用フィルムにアジピン酸エステルは含有されない。また、農耕地においても検出されず、土壌中における分解も速やかであった。したがって、栽培中に農作物がアジピン酸エステルに汚染される可能性は極めて少ない。

[キーワード]野菜、農業用フィルム資材、アジピン酸エステル

[担当]埼玉農総研・農産物安全性担当
[連絡先]電話0480-21-2091
[区分]関東東海北陸農業・流通加工
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 農業生産現場では施設あるいマルチなど被覆用にフィルム資材が使われる。また、我々の生活空間の中でもさまざまな形でフィルム資材が存在する。これら資材の中には製造過程で可塑剤が混合され、内分泌攪乱化学物質、いわゆる環境ホルモンと疑われる物質も使用されている。ここでは主に食品包装用ラップフィルムに用いられているアジピン酸エステルについて、安全な農産物の生産供給を図るために、土壌、作物への残留実態を把握し、汚染防止策を明らかにした。

[成果の内容・特徴]
1. 農業用フィルム資材中にアジピン酸エステルは検出限界以下である(表1)。
2. 農耕地においてアジピン酸エステルは検出限界以下である(表2)。
3. ハウス栽培のコマツナのアジピン酸エステル濃度はいずれの収穫時期とも検出限界以下である(表3)。また、跡地土壌についてもいずれの時期とも検出限界以下である(データ省略)。
4. ホウレンソウ8月収穫ではアジピン酸エステルは検出限界以下である(表3)。
5. アジピン酸エステルを土壌に添加し室温に放置した場合、処理後14日後には初期濃度の10%以下に低下し、濃度の低下は速やかである(図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 従来の研究結果から塩化ビニールなどのフィルム資材による多少のフタル酸エステル汚染が知られており、それら資材を使用しなければ農業生産現場におけるフィルム資材由来の内分泌攪乱作用が疑われる化学物質汚染は回避できる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:内分泌攪乱を疑われる化学物質の農作物及び環境汚染防止技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:神田 徹、佐藤賢一、中村幸二

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