早期栽培向け良質・良食味水稲中生新品種「ちば28号」


[要約]
水稲うるち新品種「ちば28号」は、早期栽培での熟期が「初星」並の中生で、いもち病抵抗性、耐冷性、耐倒伏性が強く、玄米千粒重が約23gと大粒で、玄米外観品質及び食味が良好である。早期栽培に適することから、千葉県の奨励品種に採用する。

[キーワード]ちば28号、水稲、早期栽培、いもち病抵抗性、耐冷性、良質、良食味

[担当]千葉農総研・育種研究所・水稲育種研究室
[連絡先]電話0478-56-0002
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 近年は気象変動が大きく、登熟期間の高温による玄米外観品質の低下や、穂ばらみ期の冷温による障害型冷害が頻繁にみられている。一方、農産物の安全性や環境に優しい稲作に対する消費者の関心が高まってきている。また、早生・中生・晩生の品種をバランス良く組み合わせて栽培を行うことにより、気象災害に対する危険分散や作業の効率化及び施設・機械の有効利用が図られる。しかし、中生の奨励品種「初星」は耐冷性、玄米外観品質及び食味が劣る。そこで、「初星」に代わる中生の新品種の育成を進め、異常気象下でも収量及び品質が安定し、いもち病に強い中生、良質、良食味品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「ちば28号」は「千葉6号(ふさおとめ)」の耐倒伏性及びいもち病抵抗性の強化を目的として「中部64号」を母、「千葉6号」を父として1995年に交配され、育成された。千葉県では2005年3月に奨励品種に採用する計画である。品種特性を表1に示した。
2. 出穂期は「初星」並〜やや早く、成熟期は「初星」並〜やや遅い中生品種である。
3. 稈長は約75cmで、「初星」よりやや短い。
4. 穂数は「初星」より50本前後少ない400〜450本/m2で、草型は「中間型」である。
5. 止葉は「初星」や「コシヒカリ」より立ち、草姿は良好である。
6. 耐倒伏性は「初星」並で「コシヒカリ」より強い。
7. いもち病真性抵抗性推定遺伝子型はPia及びPiiと推定され、葉いもち圃場抵抗性は「初星」並の「中」で、穂いもち圃場抵抗性は「初星」より強い「強」である。
8. 耐冷性は「初星」より強い「極強」で、穂発芽性は「コシヒカリ」並の「難」である。
9. 玄米の形は「初星」に比べて幅及び厚みがあり、玄米千粒重は22.5〜23.5gで「初星」よりやや重く、「コシヒカリ」より重い大粒である。
10. 玄米外観品質は未熟粒の発生が少なく「初星」や「コシヒカリ」より良好である。
11. 収量性は「初星」にやや優り、食味は「コシヒカリ」に匹敵する。

[成果の活用面・留意点]
1. 「初星」に代わる中生品種として千葉県下全域で2007年に6,200haの普及が見込まれる。
2. 大粒で良質・良食味な品種であることから、千葉県産米の市場評価向上に貢献できる。
3. いもち病抵抗性に優れることから、「ちば28号」を利用した減農薬栽培の普及により、安心・安全な千葉県産米の生産・流通が促進できる。また、いもち病常発地域への普及が可能である。
4. 早生及び晩生品種と組み合わせることによって、大規模稲作経営の作業の効率化や大型乾燥調製施設の有効利用が図られる。
5. 多肥栽培では玄米外観品質の低下が懸念されるので、土壌条件に応じた肥培管理法を併せて普及する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:水稲の新品種育成と優良品種の選定
予算区分:県単
研究期間:1995〜2004年度
研究担当者:西川康之、林玲子、和田潔志、長島正、斎藤幸一、小山豊、渡部富男
発表論文等:2004年3月品種登録申請

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