主要ダイズ品種のうどんこ病に対する抵抗性の差異と遺伝


[要約]
国内の主要ダイズ品種のうち、「おおすず」、「タチユタカ」、「ナカセンナリ」、「ギンレイ」等はダイズうどんこ病(Oidium sp.)に対し罹病性である。ダイズ品種の本病に対する抵抗性は優性の主働遺伝子によって発現する。

[キーワード]ダイズ、うどんこ病、抵抗性、品種間差異、遺伝

[担当]長野中信試・畑作育種部・大豆育種指定試験地
[連絡先]電話0263-52-1148
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物、作物・夏畑作物
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 1990年代末から国内各地でダイズうどんこ病の発生が報告され、長野県内では1999年以降、基幹品種の「ナカセンナリ」や「ギンレイ」に発病が認められている。本病に対するダイズの抵抗性には品種間差異が認められることから、各地の主要品種について抵抗性の有無を明らかにする。また、圃場では本病の発生時期が8月下旬以降の莢伸長期〜粒肥大期に当たること、降雨による葉の濡れが病勢の進展を抑制し発病を不安定にすることから、検定に要する日数の短縮、検定可能な期間の拡大、検定精度の向上を目的に温室内幼苗接種検定の可能性を検討する。さらに温室内幼苗接種検定により抵抗性の遺伝様式を検討し、抵抗性品種の育成に役立てる。

[成果の内容・特徴]
1. 圃場の自然発病条件下で、ダイズ品種のダイズうどんこ病抵抗性は葉の病徴の有無により区別できる。主要品種を含むダイズ125品種を供試した圃場検定の結果では、39品種(31%)が罹病性で、この中には現在一般に栽培されている「おおすず」、「タチユタカ」、「ナカセンナリ」、「ギンレイ」、「青丸くん」、「ゆめみのり」および「信濃鞍掛」や、育種母本として利用されている「シロセンナリ」、「ミヤギオオジロ」、「コガネダイズ」、「Harosoy」および「Peking」が含まれる(表1)。
2. 温室内で初生葉展開期の幼苗にダイズうどんこ病菌(中信試圃場産)を掃き落とし接種すると、抵抗性品種でも病斑を形成することがあるが、その発病程度は罹病性品種より軽く、第2本葉から上位の葉では病斑の盛り上がりが認められないことから、罹病性品種と区別することができ、検定が可能である(表2)。
3. 抵抗性品種と罹病性品種の組合せ後代を温室内幼苗接種法で検定すると、F1は抵抗性を示し、F2は抵抗性と罹病性に分離する。F2における抵抗性と罹病性の出現頻度は3:1の分離比に適合し、抵抗性は優性の主働遺伝子によって発現すると推定される(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. ダイズうどんこ病抵抗性品種育成の参考資料とする。
2. 圃場での自然発生による抵抗性の品種間差異は、大分県など他県の自然発病事例と一致し(表1)、同じ病原性を有する菌が国内に広く分布すると推察される。
3. 北海道の品種は成熟期が大きく異なるため、調査対象としていない。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:大豆新品種育成試験
予算区分:指定試験
研究期間:1999〜2004年度
研究担当者:山田直弘、高松光生、坂元秀彦、矢ヶ崎和弘
発表論文等:
1)山田ら(2002)北陸作報37:79-81.
2)山田ら(2004)北陸作報39:41-43.

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