酸素消費量測定による生ごみ堆肥の腐熟度の診断


[要約]
生ごみを100%原料とした堆肥化過程の腐熟度は、堆肥の酸素消費量から診断できる。酸素消費量が低下すると(約4μg/g/min以下)コマツナに対する生育抑制はなくなる。

[キーワード]生ごみ、腐熟度、酸素消費量、易分解性有機物、堆肥

[担当]埼玉農総研・生産環境担当
[連絡先]電話048-521-5041
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 食品リサイクル法施行等により、地域の生ごみを原料とした堆肥の生産が急増している。生ごみ堆肥は腐熟度判定指標の一つであるC/N比が低くても発酵が不十分であると著しく植物の生育を抑制する。堆肥の施設管理者にも容易に利用できる簡易な腐熟度診断法の開発が急務である。そこで、従来から堆肥の植物への安全性を確認するコマナの植害試験に代わって、酸素消費量を測定することで短時間で腐熟度診断する方法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 生ごみ100%を原料とした堆肥は、一次発酵直後(スクープ式54日)では、コマツナに対し著しい生育抑制が起こる。二次発酵が進むと(堆積60〜80日後)生育抑制は発生しない。このように従来のとおりコマツナの植害試験により腐熟度を診断することができる(図1)。
2. 熟成が不十分な生ごみ堆肥は、土壌中で無機態窒素の全窒素に占める割合が経時的に減少する。このため、植物への生育阻害は未熟な有機物等による窒素飢餓であることが推定される(表1)。
3. 堆積日数に伴い炭素含有率、C/N比、粗脂肪含有率が減少し、窒素含有率、灰分含有率がやや増加する。有機物含有率は低下傾向を示すが、有機物−粗繊維(易分解性有機物)の変化は判然としない(表2)。
4. 堆肥中の微生物活性を示す酸素消費量はコマツナの生育反応と負の関係にあり、酸素消費量が低下するとコマツナの生育は良好となった(図2)。
5. これらから、堆肥の酸素消費量は生ごみ堆肥の腐熟度診断に有効である。

[成果の活用面・留意点]
1. 酸素消費量測定による診断法により、単純な堆積日数の確認ではない堆肥の腐熟度診断とそれによる堆肥製造管理が可能である。
2. 酸素消費量は、微生物活動が不活していると診断が困難である。このため、水分を60%に調節し35℃48時間プレインキュベーションを実施して測定する。また、バラツキを考慮するため2連以上で行う。
3. 酸素消費量測定は、富士平工業製のコンポテスターを用いた。
4. 植物への最終的な安全確認には、植害試験との併用による診断が望ましい。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:受託試験
予算区分:受託試験
研究期間:2003〜2004年度
研究担当者:佐藤一弘、相崎万裕美、武田正人、宇田川浩一

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