ホウレンソウ品種によっては高土壌pHでもカドミウム濃度が低下しない


[要約]
一般に、土壌pHが高いと作物のカドミウム吸収が抑制され、ホウレンソウにおいても、土壌pHを高めるとカドミウム濃度の高い個体が出現しにくくなる。しかし、品種によっては土壌pHを高めてもカドミウム濃度は低下しない。

[キーワード]ホウレンソウ、カドミウム、重金属、土壌pH、

[担当]埼玉県農総研・農産物安全性担当
[連絡先]電話0480-21-2091
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料、流通加工
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 近年、国際的に農産物のカドミウム等重金属の許容水準下降修正が検討されており、今後、より厳しい基準を満たす農産物生産のためのカドミウム汚染予測技術の開発が求められる。そこで、カドミウム濃度が高まりやすく、埼玉県が主産地であるホウレンソウのカドミウム濃度に関する品種間差異を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 埼玉県農総研園芸研究所ほ場(土壌カドミウム含量0.24mg/kg 0.1N塩酸抽出)で栽培したホウレンソウ(5月播種15品種、10月播種18品種)のカドミウム濃度と、栽培跡地土壌pH(H2O)の関係は図1のとおりであった。土壌pHが高いとカドミウム濃度の高い作物体が出現しにくくなる。
2. 5月播種品種のカドミウム濃度は、西洋種で高く、雑種、東洋種で低い傾向がある。また、西洋種は土壌pHが低いとカドミウム濃度が高い個体が多いが、東洋種では、土壌pHとの関連性はみられない(図1a)。
3. 10月播種品種では、系統ごとでみると、西洋種、東洋種、雑種とも、土壌pHが高くなると、カドミウム濃度が低下する(図1b)。
4. 全系統でみると、土壌pHの上昇によりカドミウム濃度が減る傾向を示すものと示さない品種がある(図2)。
5. 同一品種を5月と10月に播種すると、乾物重量当たりのカドミウム濃度は、5月播種は10月播種と比較して1.5〜2.6倍高いが、5月播種は水分含量が多いため、新鮮重量当たりでは同程度である(図3)。
6. 以上の結果、ホウレンソウでは、土壌pHを高めるとカドミウム濃度が高い個体は出現しにくくなるが、品種によっては土壌pHを高めてもカドミウム濃度が低下しない。
 西洋種は、東洋種に比べ、カドミウム濃度が高い傾向にあり、西洋種の作付けが多い春から夏まきの作型で、土壌pHが低い(5.5以下)と、CODEX委員会で検討されている基準値(0.2mg/kgFW)に迫る濃度を示す。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果は、褐色低地土での試験結果であり、他土壌で栽培された場合は、同様の傾向を示すとは限らない。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:褐色低地土におけるホウレンソウのカドミウム吸収能の品種間差異の検証
予算区分:受託
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:杉沼千恵子、`島雅之、中村幸二、佐藤賢一

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