下総台地からの湧水の硝酸汚染の実態と発生源の推定


[要約]
台地からの湧水11地点中、集水域に畑地の多い6地点では環境基準値を超えるNO3-Nが検出されている。20mg/Lを超えた地点は4地点で、δ15N値から1地点は化学肥料由来、残り3地点は畜産排泄物由来と推定される。

[キーワード]湧水、硝酸、イオン成分、環境基準、δ15N値、畜産、化学肥料

[担当]千葉農総研・生産環境部・環境機能研究室
[連絡先]電話043-291-9995
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]行政・参考

[背景・ねらい]
 下総台地は標高40m程度の関東ロームの台地で、日本有数の野菜生産地を抱え、畜産業も盛んな地帯である。このため、近年、各地で顕在化している地下水の硝酸汚染に対して、これら農業系の影響が懸念されている。そこで、台地上の硝酸汚染の状況を把握し、その発生源の特定を行うことを目的に、下総台地周辺に流出する湧水の水質実態を明らかにすることとした。

[成果の内容・特徴]
1. 湧水9地点のNO3-N濃度を5年間測定した結果、2地点では1,2年の間に約10mg/L相当の濃度上昇が認められ、その後わずかな低下傾向を示した。一方、それ以外の地点では時期による変動は小さく、概ね一定していた。NO3-N濃度は測定地点により最大48mg/Lから最小0mg/Lまでの差があった。環境基準値10mg/Lを超える地点は6地点あり、その内4地点が20mg/Lを超えて検出された(図1)。
2. 湧水中のNO3-N濃度は、集水域の土地利用によって異なり、畑地>山林・畑地混在>山林の順に高く、畑地利用と硝酸汚染との関連が示唆された。NO3-N濃度とEC値との間には集水域の土地利用状況に関わらず高い相関が認められた(図2)。
3. 湧水中のNO3-N濃度とCl、SO4-S、Ca、Mg、及びNa濃度の相関は高く、特に、Mg濃度との相関が際立っていた。これらのイオン濃度は、NO3-N濃度と同様に畑地で高くなるため、施肥や堆厩肥利用に伴って負荷されたものと推察される(表1)。
4. 湧水のδ15N値は、概ね8‰以上と4‰前後の地点に分布していた。4‰前後は化学肥料、9‰以上は堆厩肥起源とされる(δ15N法による硝酸態窒素汚染源の推定、日本土壌協会、2000年)ので、高負荷を示した4地点中の3地点は、畜産由来の硝酸汚染と推定される(図3)。このことは、当該3地点では、化学肥料由来の硝酸汚染と推定された1地点に比べて、畜産排泄物中に多いCl、Na成分が多い(データ省略)ことからも推察される。

[成果の活用面・留意点]
1. 現状の湧水の硝酸汚染の実態は、台地から湧水面に到達する土壌浸透水の移動速度が1年に1m程度とされるので、過去の農耕地管理の結果であることに留意する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:谷津田における水質浄化機能の評価
予算区分:美しい農村景観形成技術開発促進事業(県単)
研究機関:1999〜2003年度
研究担当者:真行寺孝、大塚英一、金子文宜、松丸恒夫
発表論文等:
Shingyoji et al.(2004) International Joint Symposium between NIRE(Japan) and IEGS(Korea):15-26.

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