稲発酵粗飼料向けの水稲新品種候補系統「むさしの飼9号」


[要約]
水稲「むさしの飼9号」は、「はまさり」より出穂期や成熟期が10日前後早く、10%程度多収な飼料イネである。

[キーワード]飼料イネ、むさしの飼9号、晩生、多収

[担当]埼玉農総研・米・麦担当
[代表連絡先]電話048-521-5041
[区分]関東東海北陸農業・総合研究、関東東海・水田畑作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 埼玉県は、全国に先駆けて飼料イネの生産に積極的に取り組んでいる。平成17年の作付面積は93haであるが、遊休水田の利活用や安全な国産粗飼料の供給のために飼料イネの重要性はさらに高まっている。
 県内主要品種「はまさり」は収穫時期が極端に遅い極晩生に属し、収穫時期分散による飼料イネの作付拡大と移植時期が遅い地域での収量増を図るため、収穫時期の早い品種が強く要望されている。
 そこで、収穫時期が「はまさり」より10日程度早い、多収品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「むさしの飼9号」は1994年に「埼149」を母に「玉系96号」を父として人工交配を行い育成した系統である。
2. 「はまさり」と比べ、出穂期は早植で12日、普通植で8日早く、成熟期は早植で10日早い晩生の晩である。
3. 「はまさり」と比べ、稈長は早植では2cm、普通植では10cm長い。穂長は早植では3cm、普通植では4cm長い。穂数は早植では「はまさり」並、普通植では1割程度少ない。
4. 耐倒伏性は強、穂発芽性はやや易、脱粒性は難である。
5. 穂いもち圃場抵抗性遺伝子「Pb1」を有し、穂いもち圃場抵抗性は強、葉いもち圃場抵抗性はやや強である。白葉枯病抵抗性は中である。縞葉枯病には抵抗性遺伝子「Stvb-i」を有し、抵抗性である。
6. 乾物全重は「はまさり」に比べ、10%程度多収である。

[成果の活用面・留意点]
1. 普及地帯は県内全域。普及見込み面積は70ha。
2. 本品種は細長粒であるため、作業機械の清掃や種子の管理を徹底し、本品種の一般炊飯用品種への混入や交雑による品質低下に十分注意する。
3. 耐倒伏性は強であるが「はまさり」と比べやや劣るので、倒伏させないよう適正な施肥管理を行う。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:水稲等の新品種育成・定着化研究
予算区分:県単
研究期間:1994〜2005年度
研究担当者:石井博和、荒川誠、箕田豊尚、大岡直人、上野敏昭、斎藤孝一郎、岡田雄二、
      新井守、武井由美子、戸倉一泰、矢ヶ阜虫。、小指美奈子、重松統、関口孝司、
      渡邉耕造、新井登、大塚一雄

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