収穫ロス低減、消化率向上のための飼料イネロールベール収穫技術


[要約]
飼料イネ収穫機のディスクカッタとロールベーラ投入口の前方に2軸ロール式の籾破砕装置を取付け、さらにロールベール放出の開閉部にロス防止のゴム板を取付けることで、収穫ロスが約2%に下がり、消化率向上に寄与する籾微少傷付与率は30~40%に向上する。

[キーワード]飼料イネ収穫、収穫ロス、籾破砕、消化率向上

[担当]中央農研・作業技術研究部
[代表連絡先]電話029-838-8966
[区分]関東東海北陸農業・総合研究、作業技術、共通基盤・総合研究、作業技術
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 飼料イネ収穫体系では、飼料イネ生産の低コスト化および飼料の高品質化が重要である。そのためには収穫ロスの低減化や消化率向上のための籾破砕装置の開発による籾微少傷付与等も重要であり、これらの技術開発が望まれている。

[成果の内容・特徴]
1. 飼料イネを刈取り・搬送し、ディスクカッタで切断・ロールベーラに投入する直前部に取り付けた籾破砕装置の2軸破砕ロール(表1図1)により穂部を破砕する。穂、茎葉が本装置のロール軸方向に対して平行に供給されるように、しかも穂の部分を破砕ロールにほぼ全量供給できるように装置の取り付け位置を最適化することで刈取り・梱包時の収穫ロスを少なくすることができる。 籾破砕装置を取り付けても供試機の最高速度1.4m/secで収穫作業が可能で、刈取り・梱包作業時の収穫ロスは約2%と増加しない(表2)。
2. 籾破砕装置取り付けの効果と併せ、ロールベール放出のための開閉部に収穫ロスを低減するための簡単なゴム板(表1)を取り付けることによって、刈り取り・梱包作業時の収穫ロスが約4%から2%へと減少した。また、ロールベール結束時では約0.5%、ロールベール放出時で約3%収穫ロスが減少した(表2表3)。
3. ロールベール放出時にベーラの駆動を停止させると収穫ロスが約2〜4%減少するため、飼料イネの収穫ロス低減対策として有効である(表2)。
4. 籾の微少傷付与効果(NMG試薬染色法で測定)は、穂先を籾破砕装置に通すことによって大幅に向上する。籾破砕装置 を取り付けない場合、穂付き籾で約10〜14%に対し、籾破砕装置に通すと穂付き籾で約3 0%、脱粒籾で約35%となる(表2)。
5. 籾破砕装置の2軸ロール間に回転差を与えると、微少傷付与率は約10%高くなる。さらに収穫ロスが約2%低減する(表3)。
6. 穂部のみカッタ切断長を通常の12cmから6mmへ極端に狭くすると籾微少傷付与率は穂付き籾で35%、脱粒籾で41%と増加し、切断長を短くした効果はあるが、収穫ロスが約4%と増加するため、さらに改善が必要である(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 自脱型飼料イネ収穫機の収穫ロス低減および消化率向上のための籾破砕の促進に有効である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:飼料イネ収穫機の負荷低減技術の開発(飼料イネ収穫機の収穫ロス低減等性
能向上技術の開発)
課題ID:03-10-04- *-18-05
予算区分:総合研究、関東飼料イネ
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:井尻勉、小林有一、谷脇憲

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