ナタネの収穫残さは後作ヒマワリの生育を抑制する


[要約]
ナタネ跡ヒマワリでは初期生育が抑制され、その程度は、収穫残さのすき込みによって助長される。また、開花期頃の養分吸収量が減少し、その影響は収穫期まで持続する。この生育抑制は、既知の現象である窒素飢餓とは別の原因に基づく可能性が高い。

[キーワード]ナタネ、コムギ、収穫残さ、ヒマワリ、生育、養分吸収、収量

[担当]中央農研・関東東海総合研究部・総合研究第2チーム
[代表連絡先]電話029-838-8822
[区分]関東東海北陸農業・総合研究
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 近年、地球温暖化対策として、油糧作物由来のバイオディーゼル燃料(BDF)が脚光を浴びている。転換畑に導入可能な油糧作物としてはナタネ,ヒマワリがあるが,それらの作物の収量は200kg/10a程度、搾油率は20〜25%程度であるため、1作物から採取できる油脂は50l/10a程度である。ナタネ-ヒマワリを二毛作することにより採油量は増加するが、ナタネ跡ヒマワリでは生育収量の抑制がみられる。ここでは,ナタネ跡ヒマワリの生育抑制の状況を明らかにし、それに影響する要因についても検討する。

[成果の内容・特徴]
1. コムギ「農林61号」、ナタネ「キラリボシ」の収穫残さ(コムギで613g/m2、ナタネで907g/m2)を土壌表面に放置した状態で、ヒマワリ「春りん蔵」を不耕起播種すると、裸地跡に比べ、ナタネ跡では生育初期から葉が小さくなる(図1a)。ナタネ跡では主茎長も減少し、それらの減少程度はナタネ収穫残さをすき込むことで助長される(図2)。
2. ナタネ跡ヒマワリでは、新しい葉が出なくなる開花期頃でも葉が小さく(図1b)、その時期の乾物重、養分濃度、養分吸収量も減少する(表1)。また、収穫期の主茎長、花径、収量、一花粒数も低い値となる(表2)。
3. コムギ跡では、ナタネ跡ほど生育収量の減少は見られないが、開花期頃に上位葉が短くなり(図1b)、その時期の窒素濃度も減少する(表1)。その原因としては、C/N比の高いコムギ残さを土壌表面に放置したため、残さの分解が徐々に進み、開花期頃に窒素飢餓の影響が現れた可能性がある。
4. ナタネ残さの重量、C/N比はコムギ以上の値であるため、ナタネ跡の生育抑制も窒素飢餓による可能性がある。しかし、ナタネ跡の生育抑制はコムギ跡より早く見られるため、コムギ跡とは原因が異なる可能性が高い。また、ナタネ跡でヒマワリの土壌病害は確認されていない。ナタネ収穫残さのすき込みによってヒマワリの生育抑制が助長されることは、収穫残さが生育抑制をもたらした可能性を示唆する。

[成果の活用面・留意点]
1. ヒマワリの生育抑制の原因としては、グルコシノレート等が考えられるため、それらについて今後検討する予定である。
2. ナタネ残さの処理による生育抑制軽減方策についても検討を行う。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:油糧作物安定栽培技術の確立(ヒマワリ)
課題ID:03-01-01-02-48-05
予算区分:交付金
研究期間:2005〜2008年度
研究担当者:松崎守夫、岡田謙介、安本知子、北川壽

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