ロールキャリアによる飼料イネ収穫作業の効率化


[要約]
飼料イネ用ロールベーラの後部に装着し、梱包・結束されたロールベールを、刈り取り作業を継続しながら運搬する装置(ロールキャリア)を用いると、圃場内でのロールベール運搬作業の負荷が軽減され、全体の作業能率が最大35%向上する。

[キーワード]飼料イネ、収穫、飼料イネ用ロールベーラ、圃場内運搬

[担当]中央農研・北陸総合研究部・総合研究第1チーム
[代表連絡先]電話025-526-3218
[区分]関東東海北陸農業・総合研究、作業技術、共通基盤・総合研究、作業技術
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 専用収穫機(飼料イネ用ロールベーラ)と自走式ベールラッパ各1台による飼料イネ収穫作業では、収穫機により梱包・結束されたロールベールを圃場外に搬出する運搬作業が、全体の作業能率を向上するうえで重要である。そこで、自走式ベールラッパの運搬作業負荷を軽減するために、専用収穫機で刈り取りを行いながら同時にロールベールを運搬するための運搬装置(ロールキャリア)を開発し、その作業性を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 開発したロールキャリアは、収穫機の後部に接続し、ロールベール梱包部から放出される梱包・結束済みロールベール1個を受け止めてこれを積載し、必要に応じて刈り取り作業を継続しながら任意の距離を運搬した後に荷降ろしできる構造である(図1)。走行中でも、運転席後部にある荷降ろしレバーにより半自動的に荷降ろしできるため、収穫機の作業能率は低下しない。
2. ロールキャリアを装着した収穫機は、梱包・結束したロールベールをその生成位置に荷降ろしするだけでなく、任意にロールベールを運搬することにより、刈り取り作業を中断することなく、片側の農道に寄せる運搬(片側搬出法)や近い側の農道に寄せる運搬(両側搬出法)をすることができる(図2)。
3. 例えば面積46a(125m×37m)の圃場の場合、梱包済みロールベールの運搬に必要な積算距離を収穫作業シミュレーションにより算出すると、ロールキャリア無しでは最大3000mの運搬距離が、ロールキャリアを用いた片側搬出法では1601m、両側搬出法では324mに短縮される。また、総作業時間は両側搬出法で225分から147分に短縮され、全体の作業能率は約35%向上すると試算される(表1)。
4. ベールラッパの作業能率(ロールベール1個当たりに要する作業時間)について収穫作業シミュレーションと検証試験を比較すると、いずれもロールキャリアの使用により約35%の能率向上が認められる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 農道ターン方式の圃場において往復刈りで飼料イネを収穫する際に、生成したロールベールを自走式ベールラッパで運搬する所要時間を短縮し、全体の作業能率を向上することが出来る。
2. 検証試験はフレール式の専用収穫機(Y社YWH-1400A)で行ったが、本キャリアは接続部の構造を変更すれば他のロールベーラにも適応可能である。
3. 試作したロールキャリアにロールベール(170kg)を積載した際の平均接地圧は約0.04MPaとなり、現地実証圃場でも地耐力や走行性の面で問題はなかった。
4. 数値計算は収穫作業シミュレーションモデル(平成15年度研究成果情報)を供試し、実証試験圃場に対応した値で試算した結果である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:大麦・飼料用イネ2年3作体系の確立
課題ID:03-11-01-02-17-05
予算区分:地域総合(北陸大麦飼料用稲輪作)
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:元林浩太、湯川智行

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