青果物購買におけるSEICAネットを利用した生産履歴情報公開の効果


[要約]
SEICAネットを利用し生産履歴情報を公開している青果物は、購買において安全性を重視する消費者に購入されると期待でき、その安全性から顧客に高い満足感を与える効果がある。

[キーワード]生産履歴、情報公開、青果物購買、SEICAネット

[担当]茨城農研・経営技術研究室
[代表連絡先]電話 029-239-7210
[区分]関東東海北陸農業・経営
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 農産物の安全・安心を高めるため、産地においては生産履歴を記帳し管理する必要性が高まっている。このような中で生産履歴情報を公開し農産物販売に活用しようとする動きが見られるがその効果は明らかでない。一方、生産者への生産履歴記帳の推進においても、システム導入の効果を明らかにする必要がある。そこで、生産履歴情報公開システムの一つであるSEICAネットシステムをデータベースとする『いばらき農産物ネットカタログ』の運用を通じて、消費者の青果物購買におけるSEICAネットを利用した生産履歴情報公開の効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 『いばらき農産物ネットカタログ』を知っている消費者は16%であった(図1)。
2. 本システムを知っている消費者のうちネットカタログの青果物を購入した消費者は48%で、購入理由は、「品質」と「履歴がわかる」で高かった(図2)。
3. 茨城県産農産物に対するイメージを5段階で評価してもらった。本システムの青果物を購入した消費者は、茨城県産農産物に対し「安全」や「新鮮」のイメージについて評価の平均値が4(「やや思う」)以上となって高く、満足度も高かった。しかし本システムの青果物を購入しなかった消費者は、本システムを知らなかった消費者と同様で評価の平均値が4未満となり、満足度も低かった(図3)。
4. 茨城県産農産物への総合評価となる「満足」とその他の項目との相関を見ると、本システムの青果物を購入した消費者では「安全」から満足感が得られるが、本システムを認識しているが購入しなかった消費者では「美味しい」と「新鮮」から満足感を得るため、「安全」はさほど重要視していなかった(図4)。
5. 生産履歴情報を公開している青果物は、認識されれば、安全性を重視する消費者に生産履歴がわかることから購入され、その安全性から満足感が得られると期待できる。ただし、安全性以外を重視する消費者は認識しても購入に至らないため、品質などに関する情報も提供する必要がある。

[成果の活用面・留意点]
1. 生産者への生産履歴記帳の推進や行政の参考資料として活用できる。
2. 本稿の「安全」とは、生産基準に基づき農産物の生産履歴が記帳・チェックされていて、その生産履歴データを保管管理し問合せ等に対応できる体制が整っていることとした。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:農産物におけるトレーサビリティシステムの実用と評価
予算区分:高度化事業
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:中嶋 直美、川崎 勝巳
発表論文等:中島、大浦(2006)関東東海農業経営研究 96:33-37

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