魚類の生息場を創出する構造が単純な農業水路用「魚巣桝」


[要約]
農業用コンクリート水路に「魚巣桝」を設置することにより淵を形成し、同時に通水断面の確保と土砂の堆積量を一定に保持できることで魚類の生息場を創出する。

[キーワード]魚類、生息場、魚巣桝、農業用水路

[担当]福井県農試・生産環境部・土壌・環境研究グループ
[代表連絡先]電話0776-54-5100
[区分]関東東海北陸農業・作業技術
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 農業水路は多くの淡水魚にとって重要な生息場であったが、近年のコンクリート水路化に伴う生息環境の悪化により生息密度は減少している。このため、江浚いなどの維持管理を行っている農家に対しても受け入れられる魚類の再生・保全工法が必要となっている。そこで、単純な構造で水利機能を損なわない魚類の休息・避難・越冬場となる生息空間構造を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 魚巣桝を縦断的に配置することによって通水断面を阻害せずに淵や淀みを形成する(図1)。桝上流部を直壁にすることで直下流に微流速域が形成され稚魚や遊泳能力の低い魚の定位を可能とし(図3)、非灌漑期や渇水期においても生活水深が得られるため魚類の生息場として有効である(図4)。
2. 桝の基本形状は底面延長(L)を深さ(H)の4倍、斜面勾配(I)を1:4とすることで生ずる固有の水流によって掃流砂が一定量堆積し、底生魚の定着に寄与する。(図2)。
3. このシステムは単純なコンクリート構造であるため施工が容易であり、直接工事費は幅1.50m延長4.00mの場合で約300千円程度である。

[成果の活用面・留意点]
1. 被圧水がない条件下では、ウィープホールによってウロに堆積する土砂を掃流できない。このため魚巣桝にピットを併設することで集魚効果を代替する。
2. 併設するピットはウロを補完する生息域の拡大が可能で、越冬場としても有効である。また、ピットを通じて用水管もしくは魚道を設置することで、水田に魚の遡上が可能である。
3. 掃流効果が生ずる流速条件は、堆積土砂の粒径が粗砂以下で0.50m/sec程度以上、シルト以下で0.30m/sec程度以上とする。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:農業生産基盤における生物多様性阻害要因の把握と整備手法・工法の研究
予算区分:国庫補助(自然共生・環境創造支援調査事業)
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:田谷哲也

目次へ戻る