RTK-GPSを利用した圃場3次元マッピング技術


[要約]
RTK-GPSを設置した車両を圃場内部で走行させて取得したデータから、任意のメッシュサイズのグリッドデータに変換し、3次元マップを作成する技術。簡便かつリアルタイムに圃場高低差を視覚的に把握できる

[キーワード]GPS、圃場高低差、マッピング

[担当]中央農研・作業技術研究部・計測制御研究室
[代表連絡先]電話029-838-8812
[区分]関東東海北陸農業・作業技術、共通基盤・作業技術
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 生産費用の低コスト化や作業効率化を背景に圃場の大規模化が進んでいる。一筆の圃場規模が大きくなるにつれて、水田における水管理や畑圃場による排水対策などが困難になってきており、従来の圃場区画等の平面情報だけではなく、高低差を含めた圃場の3次元情報が重要となってきている。しかし、3次元測量には専用の機器と高度な資格を有した技術者が必要となり、農作業時に行うのは難しい。そこで、3次元位置を高精度に測定できるRTK-GPSを利用して圃場の3次元情報をマッピングする手法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 3次元マッピング技術は、測定システムと、マッピングソフトから構成される。測定システムはRTK-GPS(水平静止精度2cm)および、補正情報受信装置、データ記録・解析・表示装置からなる。圃場内を走行する車両の最上面にGPSアンテナを取り付け、走行中のGPSデータを記録するとともに、圃場高低差の表示を行う。携帯電話によるVRSサービス(仮想基準点補正情報配信サービス)も利用可能である(図1)。
2. マッピングソフトは、GPS座標系(WGS-84準拠)から入力原点を基準とした平面直交座標系への座標変換後、任意のメッシュサイズの圃場高度を格納するグリッドデータに変換し、圃場の平均高度の算出を行い、圃場の3次元マップを作成する(図2)。各測定データ点間の軌跡を走行幅を持つ平面とし、交差するグリッドデータを逐次更新する。軌跡を点群とし補間計算を行う通常の計算方法と比べて、計算負荷が軽減され、走行中にリアルタイムにグリッドデータの更新が可能となる(図3)。
3. マッピングソフトは、Windows2000/XP上で動作し、GPSデータの入力に応じて、走行軌跡、高低差コンターマップおよび高度差ヒストグラムの表示がリアルタイムに行われ、GPSデータや解析結果が記録される。別方式で記録されたGPSデータ(NMEA準拠のGGAフォーマット)に対しても後処理解析を行うことができる(図2)。
4. 圃場の3次元情報の測定では、始めに圃場の内周に沿って走行し、圃場区画の確定後、圃場内部を走行させる。光学測量機器(精度1cm)による測定結果と比較して、標準誤差は2cmで、細かい高低差も短時間で把握することができる(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 圃場均平作業では均平前に走行することで、均平作業手順を決定でき、均平作業中では、作業機にGPSアンテナを付け替えることでリアルタイムに高低差が視覚的に把握できるため、作業の終了判断に有効である。
2. 圃場高低差データより運土量等の計算は擬似的に可能であるが、測量基準に基づいていないため、商取引に関わる事項には利用できない。
3. 傾斜が大きいときや走行による沈下が想定される場合は測定誤差が大きくなる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:高精度GPSによる圃場均平技術及び運土計画支援システムに関する研究
課題ID:03-10-02-*-18-05
予算区分:アグリビジネス
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:建石邦夫、齋藤秀文、長坂善禎、宮崎昌宏、金谷豊、谷脇憲、行本修

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