プロピレングリコールとバイパスアミノ酸投与による乳牛のケトーシス予防


[要約]
移行期の乳牛にプロピレングリコールとバイパスアミノ酸を投与したところ、脂質およびタンパク質代謝が改善され、ケトーシス予防とそれに継発する初回発情日数の遅延予防に効果がある。

[キーワード]乳用牛、ケトーシス、3-メチルヒスチジン、プロピレングリコール、バイパスアミノ酸

[担当]静岡畜試・乳牛部
[代表連絡先]電話0544-52-0146
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 乳牛のケトーシスではエネルギーに加えてタンパク質も不足する。そこで、移行期の乳牛にエネルギー源であるプロピレングリコールとタンパク質源であるル−メンバイパスアミノ酸(以下、バイパスアミノ酸)を併用投与し、ケトーシス予防効果を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 分娩予定14日前の血中総コレステロール値が80mg/dl以下で、分娩後のケトーシス発症が予測されるホルスタイン種経産牛11頭を対象に、以下の3試験区を設定し、臨床観察、血液検査および初回発情日数の特定を実施する。
  • 3頭 無投与区
  • 4頭 プロピレングリコール投与区(PG区)
  • 4頭 プロピレングリコール+バイパスアミノ酸区(PG+BA区)
 PGの投与は250ml/d・head、分娩10日前〜分娩日(10日間)とし、BAの投与は400g/d・head、分娩7日前〜分娩14日後(21日間)とする。BAはバイパスメチオニンを添加した大豆バイパスタンパク質製剤を使用する。(図1
2. 無投与区では3頭ともケトーシスを発症し、治療日数は5.0±4.6である。PG区では4頭中3頭がケトーシスを発症したが、治療日数は2.0±1.6である。PG+BA区ではケトーシスは発症せず、ケトーシス予防に効果がある。
3. 分娩日の血中遊離脂肪酸(FFA)および分娩日〜分娩14日後にかけての血中3−メチルヒスチジンは無投与区、PG区、PG+BA区の順に高く、血中3-メチルヒスチジンでは無投与区とPG+BA区の間に有意差が認められ(P<0.05)、脂質とタンパク質代謝の改善に効果がある。(図2,3
4. 初回発情日数は無投与区72±15、PG区54±27、PG+BA区36±13で、無投与区とPG+BA区の間に有意差が認められ(P<0.05)、ケトーシスに継発する初回発情日数の遅延予防に効果がある。(表1

[成果の活用面・留意点]
1. 乳牛のケトーシスおよびこれに継発する初回発情日数遅延の予防法として有効であり、酪農家の経営被害を軽減できる。
2. 従来、ケトーシス予防法として行われてきたPG単独投与よりも、PG+BA併用投与の方が予防効果が高い。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:乳牛における血中3-メチルヒスチジン濃度を指標とした代謝病予防・治療法の確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:赤松裕久、齋藤美英、芹澤正文、三宅晃次、大庭芳和

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