飼料中分解性及び非分解性蛋白質含量を高めた発育促進牛の乳生産性


[要約]
乳用育成牛の初産分娩月齢の早期化を目的として、初産種付け期までの発育を促進させる場合の給与飼料中の分解性蛋白質及び非分解性蛋白質含量の違いは、乳生産性に影響を及ぼさない。

[キーワード]乳用牛、育成牛、初産分娩、分解性蛋白質、非分解性蛋白質、乳生産性

[担当]千葉畜総研・生産技術部・乳牛研究室
[代表連絡先]電話043-445-4511
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 生後90日齢から初産種付け期までの栄養水準を高めることにより、21〜22ヶ月齢で初産分娩させても、体格が充分であれば安全に分娩させることが可能である。しかしながら日増体量(DG)が1.0kgを上回ると初産時の乳生産を低下させる可能性がある。
 そこで、栄養水準を高めることにより、初産種付け期までの日増体量(DG)を高めた場合の給与飼料中の非分解性蛋白質(CPu)及び分解性蛋白質(CPd)含量の違いが乳生産性に及ぼす影響を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 試験方法:供試牛の体重が200kgを基準として前・後期に分け、給与飼料中の可消化養分総量(TDN)をほぼ同水準とし、CPd含量を前期9.2%、後期8.3%、CPu含量を前期4.9%、後期3.9%とするLP区、前期のCPu含量を2%、後期のCPd及びCPu含量をそれぞれ1%高めてCPd含量を前期9.5%、後期9.4%、CPu含量を前期6.7%、後期4.9%量とするHP区を設け(表1)、生後90日齢から体重が350kgを超えるまでの期間飼養試験を実施。
この間のDGはLP区が1.05kg、HP区が1.08kgであり、発育には差は無い。
2. 繁殖成績:初回発情は290日程度で観察され、初回種付け日齢はLP区が357日、HP区が354日と差はない。受胎時の日齢はLP区が379日、HP区が364日となり、差はない。(表2
3. 分娩状況:分娩時の月齢はLP区が21.7ヶ月、HP区が21.3ヶ月となり、差はない。
分娩時の体重は、LP区が540kg、HP区が549kgとなり、差はない。(表3
4. 泌乳成績:分娩後15週間の平均日乳量はLP区が25.3kg、HP区24.5kgとなり、差はなく、乳成分にも差はない。(表4

[成果の活用面・留意点]
1. 酪農家および育成牧場における育成前中期の飼養管理方法として参考となる。
2. 初産種付けは体重350kg、体高125cmを基準としている。
3. 体重350kg以降は担当した各県の慣行法で飼養管理を行っている。
4. 日本飼養標準乳牛1999年版では育成期のDGを900g程度までが安全としている。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:高能力乳用牛の初産分娩月齢早期化技術
予算区分:国補(先端技術等地域実用化研究促進事業)及び県単
研究期間:2001〜2005年度
研究担当者:川嶋賢二、鎌田望、井上貢(千葉畜総研)、蓮沼俊哉、上田博美、紺博昭(富山畜試)、金川博行、織部治夫(石川畜総セ)、石井貴茂(茨城畜セ)、中山博文、原田英雄(愛知農総試)、秋山清、久末修司(神奈川畜技セ)、海内裕和、久保田和弘(長野畜試)、栗原光規、寺田文典、櫛引史郎(畜産草地研)

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