部分尿による乾乳牛の尿中カリウム排泄日量の推定法


[要約]
乾乳牛において、部分尿のクレアチニン濃度とカリウム濃度を測定することで、1日の尿中カリウム排泄量を推定できる。

[キーワード]乳用牛、尿、カリウム、クレアチニン

[担当]岐阜畜研・酪農研究部
[代表連絡先]電話0573-56-2769
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 粗飼料中のカリウム(K)過剰に起因して、乾乳牛は必要以上のKを摂取している傾向が強い。Kの過剰摂取は、乳熱を引き起こす原因の一つとされていることや尿量の増加をともない大半が尿中に排泄されるため排泄物の増加や耕地へのK負荷量の増大が問題となっている。体重当たりの尿中クレアチニン排泄日量は飼料や個体の影響を受けることなく一定量排泄されることが知られている。そこで、K過剰摂取を把握するための方法として、部分尿のKとクレアチニンの濃度比測定による1日の尿中K排泄量の推定法を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 妊娠乾乳牛6頭を用いて、分娩予定日の4, 2, 1週前に1日間全尿採取を行い、1日に排泄される尿中クレアチニン量(mg/日・体重kg)を測定したところ、個体や分娩までの日数による有意差は認められず一定量排泄され、その平均値は22.8mg/日・体重kgである(表1)。
2. 妊娠乾乳牛6頭について6時間尿(72サンプル、6頭×3日×4回/日)のKとクレアチニンの濃度比(K/c)を測定したところ、各時間帯で個体ごとにほぼ一定であった。また、6時間尿のK排泄量とK/cとの間に高い正の相関関係が認められた(r=0.95)。
3. これらのことから、部分尿による1日の尿中K排泄量の推定式を作成した(式1)。式1による推定値と1日の尿中K排泄量(実測値)との比較の結果、相関係数は0.91、標準誤差20.4g/日であり、部分尿により1日の尿中カリウム排泄量の推定が可能である(図1)。
4. 非妊娠乾乳牛8頭にK含量が1または2%の飼料を給与した時の尿を1.5時間間隔で採取し、1.5, 3.0, 4.5, 6.0時間間隔の部分尿に調整した上で、それぞれについて式1により1日の尿中K排泄量を推定して1日の尿中K排泄量の実測値との相関を比較した。その結果、部分尿として用いる尿の時間間隔が短くなると尿中K排泄量の推定精度はやや低くなるものの(表2)、K過剰摂取(K含量2%以上)を把握するのに十分な精度で推定は可能である。

[成果の活用面・留意点]
1. 尿中K排泄量の測定はK摂取量の診断に活用可能であり、乳熱の予防、尿量及びK排泄量の低減に役立つ。
2. 高い精度で尿中K排泄日量を推定するためには、複数回もしくは複数頭により尿を採取することが必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:近赤外線を利用した乳牛の栄養健康診断法の開発
予算区分:県単
研究期間:2002〜2005年度
研究担当者:浅井英樹、林登、高井尚治、高原康実、北山智広、吉村義久、中村豊(茨大)、喜多一美(名大)
発表論文等: Asai et al.(2005)Animal Science Journal 76:51-54
浅井(2004)東海畜産学会報 15:14-18
特願2003-040290「尿中カリウム排泄量の定量方法及び定量装置」

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