ニホンナシ「幸水」の盛土式根圏制御栽培法


[要約]
ニホンナシ「幸水」のドリップかん水による盛土式根圏制御栽培では、雨よけハウス栽培の場合、1樹当たりの培土量150L、裁植本数200樹/10aとし、着果数80果/樹とすることにより、高品質で慣行栽培(地植え棚栽培)の2倍以上の収量が得られる。

[キーワード]ニホンナシ、ドリップかん水、根域制限、高品質多収

[担当]栃木農試・園芸技術部・果樹研究室
[代表連絡先]電話028-665-7143
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 本県ニホンナシの主要品種「幸水」は、導入から40年以上が経過し、老木化、萎縮症及び土壌病害等による収量、果実品質の低下が深刻な問題となっている。そこで、高品質で慣行栽培の2倍を越える多収が可能となる、ドリップかん水による根域制限栽培法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 本方式の栽植距離は、自走式防除機による薬剤散布が可能な、株間2m×列間2.5mの200本/10a植えとする。仕立て方は2本主枝の一文字Y字仕立てとし、地上1mの高さで主枝を2本分岐させ、約130cmの側枝を約50度斜め上方に誘引する(図1)。
2. 培土は赤玉土:バーク堆肥=2:1の混合土を使用し、ビニル、遮根シートを敷き、その上に盛土(縦横70cm、高さ30cm)し、量は1樹当たり150Lとする。
3. 水分管理はコンピューターにより制御し、樹の吸水量を基に1日20回、40分おきにドリップかん水を行う(表1)。
4. 年間窒素施用量は成分で1樹当たり100gで、緩効性100日タイプの肥料(窒素-りん酸-加里、14-12-14の混合肥料)をかん水を開始する催芽直前に施用する。その他、苦土炭酸カルシウム肥料、ようりん、微量要素を催芽直前に施用する。
5. 着果数が収量、品質に及ぼす影響について、100果と80果をくらべると収量は差が無く、糖度は80果が高い。また、80果と60果では収量は80果、糖度は60果が優れる。このため、着果数を80果にすることにより、高品質で慣行の2倍以上の果実を収穫することができる。
6. 以上の盛土式根圏制御栽培法は、樹の吸水量にあわせたかん水管理をし、着果数を80果にすることにより、高品質で慣行栽培の2倍を越える多収が可能となる。

[成果の活用面・留意点]
1. かん水量が不足すると、生育不良、落葉等の障害が発生するので、不足しないように注意する。
2. 露地、加温ハウス等の作型でも、栽培可能である。
3. 本栽培法は、2003年12月に「果樹類の盛土式根圏制御栽培方法」として特許を出願しているため、栃木県と契約を締結している事業所を通じての導入が前提となる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:ナシのドリップかん水による根圏制御栽培技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2001〜2005年度
研究担当者:大谷義夫、鷲尾一広

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