冬春キャベツの低硝酸化技術マニュアルの策定


[要約]
キャベツの硝酸イオン濃度と、収穫時期、環境条件と硝酸還元酵素活性、施肥条件、微量要素の葉面散布及び品種間差異等の要因との関係を明らかにし、それに基づき策定した低硝酸化技術マニュアルにより、結球硝酸イオン濃度の低減ができる。

[キーワード]キャベツ、硝酸、微量要素、品種

[担当]愛知農総試・園芸研究部・野菜グループ、東三河農業研究所・野菜グループ
[連絡先]電話0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 近年、野菜に含まれる硝酸イオンが、健康との関連から各方面で研究され、関心が高まっている。本研究では、農林水産省先端技術高度化事業により、キャベツの低硝酸化技術の開発研究を行い、収穫時期、環境条件と硝酸還元酵素活性、施肥条件、微量要素の葉面散布及び栽培品種間差異が結球中の硝酸イオン濃度に及ぼす影響を明らかにし、硝酸イオン濃度低減化技術マニュアルを作成する。

[成果の内容・特徴]
1. 牛ふん堆肥を多量に施用(16t/10a、T-N120kg)すると、収穫時期別の結球硝酸イオン濃度は、2月収穫までは慣行施用(2t/10a、15kg)と同程度で推移するが、3月は841mg・kg-1FW(慣行の3.3倍)、4月は1163mg・kg-1FW(慣行の3.8倍)と急激に高くなる(データ略)。
2. 窒素施用量の増加にともない結球硝酸イオン濃度は高くなるため、堆肥や肥料の施用量を適正(施肥N30kg/10a)にすることにより結球硝酸イオン濃度が低減できる(図1)。
3. 追肥時期を早めるなど、結球期後半の窒素吸収を抑制することにより、結球硝酸イオン濃度が30〜76%低減する。特に2回行う追肥をまとめて1回目に行うことで最も低減する(図2)。
4. 結球初期の結球葉における硝酸還元酵素活性は、日中に最も高くなり、その後低下し、翌日の日の出前には日中に比べて44%活性が低下する。この活性の変化に伴い硝酸イオン濃度は、早朝が最も高く、夕方には早朝の67%に低下する。遮光条件下では、硝酸還元酵素活性は低く推移し、硝酸イオン濃度は高くなる。そのため、晴天続きの午後に収穫することにより硝酸イオン濃度が低減できる(データ略)。
5. モリブデン、マンガン、亜鉛を葉面散布することにより硝酸イオン濃度が低減(16〜36%)する。特に、50ppm濃度のモリブデン散布で安定した効果がある(図3)。
6. 初夏穫り栽培では、寒玉系品種で硝酸イオン濃度の低い傾向があり、特に「長野中生」が最も低い(図4)。年内穫り栽培では、春系品種が低く、寒玉系品種の平均値が春系品種の約1.2〜1.5倍と高い傾向がある(データ略)。品種選択により結球硝酸イオン濃度が低減できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 硝酸イオン濃度の低減化には、施肥技術が最も重要であり、モリブデンの葉面散布は、その補完技術として利用する。
2. 硝酸イオン濃度は、気象等の環境条件により大きく変動するので、それらを勘案して低減技術を選択する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:窒素代謝・光合成能の高活性化等を活用したキャベツ・ハクサイ等の硝酸塩濃度低減化
予算区分:高度化事業
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:清水知子、長屋浩治、荻野和明、恒川歩、矢部和則、今川正弘
発表論文等: 波多野ら(2003)愛知農総試研報35:79-83
長屋ら(2005)愛知農総試研報37:83-87
清水ら (2005) 愛知農総試研報37:89-93

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