フルオープンハウスを用いた抑制トマト栽培での防虫ネット展張による上物果の増加


[要約]
フルオープンハウスの開口部に防虫ネットを展張すると、展張しない場合に比べて、ハウス内温度は2〜3℃上昇する場合があり、日射量は20%低下する。トマトの上物収量および上物率は増加し、下物果のうち虫害はなくなり、裂果は減少する。

[キーワード]トマト、フルオープンハウス、防虫ネット、高温対策

[担当]東京農総研・商品開発科・野菜研究室
[連絡先]電話042-528-1394
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 ハウス抑制トマト栽培(無加温)では、一般的に供給量が少ない9〜11月を主な収穫期とするため有利販売ができる。しかし、栽培環境は夏季の高温期を経るので、品質や収量の低下が懸念される。一方、フルオープンハウスは、屋根面を開放できるために好天時の昇温を防ぐことができ、高温期の品質および上物率の向上に有効である。そこで、ハウス開口部に防虫ネットを展張したフルオープンハウスを試作し、防虫効果および生育・収量を調べ、その実用性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 防虫ネットは、側面はコナジラミ類の進入防止を目的に0.4mm目合いとし、天井部は通気性を確保するために0.8mm目合いとする(図1)。夏期高温時は、雨天時以外はハウスフィルムを開放するが、晴天日では強日射による果実の日焼けを防ぐために遮光資材をハウス内にする。
2. 日中のハウス内温度は、ネットを展張すると、状況により外気温に比べて2〜3℃高くなる場合がある。夜間のハウス内温度は、ネットの有無による差はない。また、ネットを展張したハウスの日射量は、ネットを展張しない場合より約20%低下する(図2)。
3. 防虫ネットを展張した場合の総収量は、展張しない場合とほぼ同等であるが、上物収量は増加する。上物率は、ネットを展張しない場合より約13%増加する(図3)。
4. ネット展張下では、抑制トマトの総収穫果に対する下物果の割合は、ネットを展張しない場合よりも減少する。このとき下物の内訳は、虫害(オオタバコがよる食害)はなくなり、総収穫果に対する裂果の割合は、約12%に減少するが、空洞果および小玉果の割合は増加する(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. フルオープンハウスに防虫ネットを展張した場合は、通常の雨よけハウスに比べ、約3〜4割のコスト増となる。しかし、資機材の耐用年数を勘案すると、年間コストは小さくなり、高品質化や上物率の増加、作業環境改善による有利性は高い。
2. 防虫ネットを利用する場合、昇温抑制効果と防虫効果を発揮できるようにするため、繊維が細く通気性の高いネットを選定する。また、天井部のネットは、フィルムの開閉による負荷が大きいことから、側面に比べ耐久性・耐候性の強い資材を用いる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:抑制トマト栽培を主軸としたフルオープンハウスの効果的利用管理技術の開発
予算区分:都単
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:沼尻勝人・小寺孝治・澁澤英城・田邊範子

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