ブルーベリー種間雑種(Vaccinium corymbosum ×V. ashei )の倍数体作出法


[要約]
ブルーベリーの種間交雑種子にコルヒチン500mg/Lを処理することで、種間雑種の倍数体または倍数性キメラを得ることができる。

[キーワード]ブルーベリー、種間雑種、コルヒチン、倍数体

[担当]東京農総研・商品開発科・植物バイテク研究室
[連絡先]電話042-528-0640
[区分]関東東海北陸農業・生物工学
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 近年、都内を含め全国で栽培の拡大しているブルーベリーには、主要な栽培種として4倍体のハイブッシュブルーベリー V. corymbosum (以下、HB)と6倍体のラビットアイブルーベリー V. ashei (以下、RB)がある。寒冷地向きで果実品質に優れるHBと、温暖地向きで生育強勢なRBとの種間雑種(5倍体)は、関東以南で栽培しやすく高品質なブルーベリーの育種素材として有望である。一方、種間雑種は稔性が低いために中間母本としての利用には問題がある。一般に、種間雑種の稔性向上には、染色体倍加による複二倍体化が有効であることから、種子へのコルヒチン処理による種間雑種の倍数体作出法を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. HBおよびRBの種子を無菌播種し、コルヒチン20〜500mg/Lを処理すると(図1)、発芽率の低下はほとんど無く(表1)、発芽実生は正常に生育する。
2. 種間交雑種子(♀HB×♂RB)にコルヒチン500mg/Lを処理すると(図1)、倍数体(10x)や倍数性キメラ(5x+10x)が得られる(図2 D E)。倍数体および倍数性キメラの出現率は13%である(表2)。
3. HBおよびRBの種内交雑種子に同様のコルヒチン処理を行っても倍数体を得られなかったことから(表2)、種間雑種は両親種に比べて倍数体を生じやすいことが示唆される。
4. コルヒチン処理により得られた種間雑種の倍数体および倍数性キメラは、順化・鉢上げ後、ガラス温室で正常に生育する。倍数体は通常の種間雑種(5倍体)に比べて葉が厚く、生長速度が遅い傾向である。

[成果の活用面・留意点]
1. 本法を用いることで、ブルーベリー種間雑種の倍数体または倍数性キメラを1割以上の確率で得ることができる。
2. 得られた倍数体および倍数性キメラは、葉が肉厚であるなど従来のブルーベリーにない種々の特徴を持つため、観賞用素材としての利用が期待できる。
3. 複二倍体化により稔性の向上した個体については、ブルーベリーの新しい育種素材としての利用が期待できる。


[具体的データ]



[その他]
研究課題名:遺伝資源の収集・評価・保存
予算区分:都単
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:宮下千枝子、石川駿二(東京農工大)、三位正洋(千葉大)

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