キュウリうどんこ病菌のステロール脱メチル化酵素阻害剤(DMI剤)標的酵素遺伝子(CYP51 )の構造及びDMI剤抵抗性


[要約]
キュウリうどんこ病菌のCYP51 遺伝子は、ゲノム中に1コピー存在し、既報の植物病原糸状菌CYP51 と類似した構造をもつ。DMI剤耐性菌では、基質または薬剤結合部位周辺に1〜4個のアミノ酸残基置換を伴う塩基の変異が認められ、DMI剤耐性に関与している可能性が示唆される。

[キーワード]ウリ類うどんこ病菌、DMI剤耐性、ステロール脱メチル化酵素、CYP51

[担当]神奈川農技セ・野菜作物研究部
[連絡先]電話0463-58-0333
[区分]関東東海北陸農業・生物工学
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 近年、キュウリ栽培でDMI剤耐性うどんこ病菌が出現し、防除効果が低下している。そこで、キュウリうどんこ病菌のDMI剤耐性の遺伝子診断技術を開発するため、DMI剤の標的酵素であるCYP51の遺伝子を単離するとともに、その遺伝子構造とDMI剤抵抗性との関係を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. キュウリうどんこ病菌CYP51遺伝子は、開始コドンから終止コドンまで1688bpからなり、その内部2カ所にイントロンが存在し、526アミノ酸をコードしている。また、ゲノム中に1コピーのみ存在する。
2. 既報のいずれの植物病原糸状菌のCYP51とも、塩基配列で62〜78%、また、推定アミノ酸配列で58〜86%の相同性を有する(表1)。
3. DMI剤耐性菌には、4塩基変異または1塩基変異のみが認められる菌株の2系統が分離され、それぞれA372G、I374V、V449L、G461Sの4残基及びG461Sのみのアミノ酸置換を引き起こしていると推定される(表2)。
4. トリフミゾールに対してRf値で833.3以上の耐性を示す菌株にはすべて4塩基変異が存在するのに対し、Rf値100前後を示す菌株にはG461Sの1塩基変異である(表2)。
5. CYP51の推定3次元立体構造上の変異塩基アミノ酸残基の位置は、基質及び薬剤結合部位周辺に集中していることから、キュウリうどんこ病菌のDMI剤耐性への関与が示唆される。

[成果の活用面・留意点]
1. 供試した菌株は全農が分離し、各菌株の薬剤耐性は、リーフディスク法により生物検定した結果である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:ウリ類うどんこ病菌におけるDMI剤耐性機構の解明と遺伝子診断技術の開発
予算区分:競争的研究資金(高度化事業)
研究期間:2004〜2005年度
研究者担当名:久保深雪、野村研、武田敏幸(全農)、上西愛子、植草秀敏、北宜裕

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