大粒で収量が多く醸造適性の優れる二条大麦新品種「サチホゴールデン」


[要約]
二条大麦新品種「サチホゴールデン」は、早生で千粒重が大きく整粒歩合が高く多収である。オオムギ縞萎縮病ウイルス系統I〜III型及びうどんこ病に抵抗性である。麦芽エキス及びジアスターゼ力が高く麦芽品質は総じて優れる。栃木県で奨励品種に採用予定である。

[キーワード]二条オオムギ、ビール大麦、新品種、多収性、高醸造適性

[担当]栃木農試・栃木分場・二条大麦育種指定試験地、ビール麦品質改善指定試験地
[連絡先]電話0282-27-2711
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物(冬作物)、作物・冬作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 主力品種の「ミカモゴールデン」は、醸造適性が実需者から高く評価されているが、うどんこ病に弱く、整粒歩合が低いことに加え、主産地で拡大しているオオムギ縞萎縮病ウイルス系統III型に罹病するため、原料の安定供給の点で難がある。オオムギ縞萎縮病ウイルス系統I〜III型抵抗性品種である「スカイゴールデン」は、順調に作付面積を拡大させており、今後は主力品種の一つになることが予想されるが、水感受性が劣ることや麦芽のコールバッハ数が高いことなどの理由で、契約面積は毎年実需者と協議することとなっており、これに特化させた普及拡大は困難である。そこで、「スカイゴールデン」に加えて新たにオオムギ縞萎縮病ウイルス系統I〜III型に抵抗性で高品質な品種の普及が急務となっている。

[成果の内容・特徴]
 「サチホゴールデン」は、1993年度にオオムギ縞萎縮病抵抗性、高醸造品質、多収を育種目標に、「大系R4224」を母、「関東二条29号」を父として人工交配を行い、派生系統育種法により選抜・固定を図ってきたものである。2005年度における世代はF14である。
 「ミカモゴールデン」と比較して、次のような特徴がある(表1)。
1. 出穂期は4日早く、成熟期は同程度の早生種である。
2. 稈長は短く、穂長は長く、穂数は同程度である。耐倒伏性は強い。
3. 赤かび病は同程度のやや強で、うどんこ病とオオムギ縞萎縮病ウイルス系統III型に抵抗性である。また、ウイルス系統I型及びII型に対しては「ミカモゴールデン」と同様に抵抗性である。
4. 収量性が高い。千粒重が大きく、整粒歩合が高い。
5. 原麦粒見かけの品質はやや優れる。
6. 麦芽エキス、ジアスターゼ力、最終発酵度が高く優れる。
7. 麦芽粗蛋白がやや低く可溶性窒素がやや高いためコールバッハ数は高い。
8. 水感受性は同程度で優れる。麦汁β−グルカンは低く優れる。

[成果の活用面・留意点]
1. 温暖地の平坦地に適する。
2. 「スカイゴールデン」と同程度に側面裂皮粒が発生しやすいので、極端な早播きは避け、湿害対策に努める。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:温暖地向け縞萎縮病抵抗性、凍霜害抵抗性、高醸造適性二条大麦の育成
予算区分:指定試験、ブラニチ1系
研究期間:1993〜2005年度
研究担当者:加藤常夫、長嶺敬、粂川晃伸、山口恵美子、大野かおり、渡辺浩久、大関美香、関和孝博、渡辺修孝、谷口義則、山口昌宏、大塚勝、小田俊介、常見讓史、五月女敏範、加島典子、仲田聡、河田尚之、石川直幸、小玉雅晴、野沢清一、福田暎、佐藤圭一、早乙女和彦、徳江紀子、宮川三郎、神永明
発表論文等:命名登録及び品種登録出願

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