穂発芽しにくい早生の中華めん用硬質小麦新品種「ハナマンテン」


[要約]
「ハナマンテン」は、硬質小麦で、穂発芽性が難の早生である。高分子量グルテニンサブユニット5+10(Glu-D1d)及び低分子量グルテニンサブユニットg(Glu-B3g)を持ち、グルテンが強靱でゆでのびし難く中華めん用に適する。長野県で認定品種に採用予定。

[キーワード]コムギ、硬質、中華めん、穂発芽性、早生、トウモロコシ法、グルテン

[担当]長野農事試・育種部
[連絡先]電話026-246-9783
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物(冬作物)、作物・冬作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 食の安全、地産地消の要求が高まり、国産小麦の地粉で中華めんを作りたいという要望はきわめて強い。しかし、中華めん用の硬質小麦品種は穂発芽しやすい晩生であり、関東北部・東山地方では、良質の中華めん用硬質小麦の生産は困難であった。そのため、これら地域に適応するグルテンが強靱で耐穂発芽性が優れた硬質小麦の育成を図った。

[成果の内容・特徴]
 「ハナマンテン」は、早生、穂発芽性難、良質硬質小麦品種を早期に育成することを育種目標に、1995年度、長野県農事試験場において、グルテンが強靱な「KS831957」を母とし、難穂発芽性で早生の「西海179号」を父として人工交配を行い、得られた雑種第一代においてトウモロコシ法による半数体育種法を用い固定化を図り、以降、系統選抜を図ってきたものである。2004年度播種した系統の世代は半数体倍加後第9代である。
 育成地では標準品種「シラネコムギ」と比較して次のような特徴がある(表1)。
1. 播性程度はII、ふ色は褐、穂型は紡錘状の有芒種である。
2. 出穂期で5日、成熟期で4日程度早い早生である。
3. 稈長はやや低く、穂長はやや長く、穂数が多く、収量は同程度である。
4. 容積重はやや小さく、千粒重はやや大きく、原麦粒の見かけの品質は同等である。
5. 耐倒伏性はやや劣り、耐凍上性は同等に強いが、耐寒性、耐雪性は劣る。
6. 穂発芽性は難で優れる。縞萎縮病抵抗性は強、赤かび病抵抗性はやや劣る弱、うどんこ病抵抗性はやや劣る中、赤さび病抵抗性はやや劣るやや弱である。
7. 粉の蛋白質含量がやや高く、アミロース含量はやや低い。
8. 粉の色は明るさがやや低いが、赤みと黄色みは同等である。
9. 高分子量グルテニンサブユニット5+10(Glu-D1d)及び低分子量グルテニンサブユニットg(Glu-B3g)を持ち、グルテンインデックスが高く、グルテンが強靱である。
10. ゆでのびし難く、中華めん官能評価点が高い。

[成果の活用面・留意点]
1. 良質中華めん用小麦生産のためには原粒の粗蛋白質含量が11.5%〜14.0%の小麦生産が求められる。このため、出穂期の追肥を必ず行う。
2. 関東北部・東山地方及び南東北・北陸地方に適するが、越冬性は十分ではないので高冷地、多雪地への作付けは避ける。
3. 赤かび病に弱いので、防除基準に従い適期防除を徹底する。
4. 商品化には、特許第3109519号(超強力小麦粉含有改質小麦粉とそれを用いた小麦粉食品)の許諾申請が必要な場合がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:寒冷地南部・温暖地北部向け早生、耐寒性、高品質めん用小麦品種の育成
予算区分:指定試験、21世紀1系、ブラニチ1系
研究期間:1995〜2004年度
研究担当者:中村和弘、細野 哲、上原 泰、中澤伸夫、高橋信夫、牛山智彦、前島秀和、新井利直、谷口岳志、後藤和美、田淵秀樹、酒井長雄、久保田基成、近藤武晴、中村俊樹(東北農研)、石川吾郎(東北農研)、池田達哉(近中四農研)
発表論文等:命名登録及び品種登録出願

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