豚ぷんと化学肥料を混合した成分調整肥料の製造および畑作利用


[要約]
豚ぷんを乾燥し、化学肥料を添加混合した後、成型・乾燥してペレット肥料を作ることができる。成分調整材として尿素、塩化加里を混合した同肥料は、原料豚ぷんの窒素肥効率を50%として施肥量を設定することで、ナス、ホウレンソウ、スイートコーンに対して化学肥料と同等の収量が得られる。

[キーワード]豚ぷん、成分調整、ペレット、肥料化

[担当]栃木農試・環境技術部・環境保全研究室
[連絡先]電話028-665-7148
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 畜産業から排出される家畜ふんの適正処理促進のため、処理手法の拡大が求められる。家畜ふんに他の肥料資材を添加して成分構成を調整することによる肥料化利用が期待される。これまでに牛および豚ぷん堆肥に菜種油粕を添加する例などが報告されている。そこで、取り扱い性向上に加え、処理時間の短縮を目的として、堆肥化していない豚ぷんと化学肥料を原料とした成分調整肥料を作成し、その性状および畑作物への施用効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 豚ぷんを250-350℃の熱風で15-30分間、加熱乾燥(一次乾燥)し、成分調整材を添加後、湿式押出造粒機にてペレット状に成型する(図1表1)。造粒に対する原料の至適水分率は5〜15%である(データ略)。
2. 製品肥料中の有害金属等含有率は、肥料取締法が定める複合肥料の化成肥料への含有が許される有害成分の最大量以下である(表2)。
3. 乾燥豚ぷん中の大腸菌群数は、検出限界(10 CFU/g)以下である(デオキシコレート寒天平板法による、データ略)。
4. 製品肥料を水分率5%以下まで二次乾燥し、樹脂袋に密封することにより、成分含有率が長期間維持される(データ略)。
5. コマツナによる植害試験において、豚ぷん肥料施用による発芽障害および生育阻害は認められない(データ略)。
6. 乾燥豚ぷんに尿素、ようりん、塩化加里を混合した製品肥料(表1)は、豚ぷんの窒素肥効率を50%と換算することで、ナス、ホウレンソウ、スイートコーンに対して化学肥料と同等の収量が得られる(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 家畜ふんと普通肥料を混合する本方法で製造した肥料は、現行の公定規格には分類がないため、公定規格改正を申請中である。
2. 乾燥豚ぷんに成分調整材として石灰窒素、過りん酸石灰、パームアッシュ(ヤシ殻灰)を用いた場合にも適正に成型できる。
3. 豚ぷん肥料は、豚ぷん由来の有機態窒素等の無機化が必要なため、温暖期の施用に適する。
4. 豚ぷん肥料は、含有全窒素1kgあたり17gの亜鉛を含むため、黒ボク土壌の場合(仮比重0.75、作土15cmとして)、同肥料を窒素量で10aあたり1kgを施肥するごとに、土壌中の亜鉛含有率は0.15mg/kg程度上昇することが見込まれる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:地域未利用有機質資源の肥料化方法の開発
予算区分:県単
研究期間:2002〜2005年度
研究担当者:齋藤匡彦、宮崎成生

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